The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
雪は徐々に積もりだし、辺りは真っ白に染まっている。
そんな中で私は橘の家を目指しながら走り、吐き出す息は真っ白に染まっていた。
武道が何故、橘を振ったのだろうか。
私の脳内にはずっとその謎が回っていた。
あれだけ橘を守ろうとしていて、あれだけ愛していたはずなのに何故今日になって振ったのか。
「ここだったよな……」
数分にしてから橘が住んでいるマンションに辿り着く。
エレベーターに乗り込んでから、彼女が住む部屋へと向かってからインタホーンを鳴らした。
数秒経って、インタホーンの向こうから音が聞こえた。
「はい」
「夜分すみません、神澤と言います。日向さんはいらっしゃいますか?」
「和泉君……!?」
暫くすると足音が聞こえて、勢いよく扉が開く。
中からは泣き腫らした顔をした橘が出てきて、その表情に胸が傷んだ。
「本当に来てくれたんだ……」
「取り敢えず、話聞かせてもらっても大丈夫か?」
「……うん」
橘は『近くの公園に行こう』と言い、私は彼女と共にマンションの近くにある公園へと向かった。
彼女は静かだった。
公園のブラコンに腰掛けながら、俯いていたけれど、潤んだ瞳で私を見てくる。
「今日ね、タケミチ君に話があるって言われたの。だったらね、振られちゃったの。『好きな子が出来た。もうヒナは好きじゃない』って言われちゃった」
「……武道が、そんなことを?」
「うん。本当はね、和泉君に連絡するのもおかしいかなと思ったけど……一応報告はしなきゃと思って」
「橘は、武道の言葉に頷いたのか?」
「……ううん。思わず、タケミチ君を殴っちゃった」
ポタッ……と雪の上に水滴が落ちる。
橘の瞳から涙が零れ出していて、それが雪の上に落ちていく。
「ずっと、タケミチ君と一緒にいれると思ったのに……。ヒナ、飽きられちゃったのかな」
「まさか……!」
武道はとても橘を大切に思っていた。
それなのに何故、橘を振ったというのだろうか。
武道の考えが理解できない。
これは、後で武道の元を尋ねて理由を聞き出さなければ。
「でも、本当にヒナは飽きられたんだと思う。だって一昨日ぐらいに、タケミチ君が女の子と歩いてるの見ちゃったの」
「……え?武道が?」