The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
ー和泉sideー
電話が着信音を鳴らしている。
一体誰からの電話なのだろうかと思いながら、携帯を開いて数回瞬きをした。
「橘……?」
携帯の画面に出ているのは橘の文字。
橘は基本あまり電話はしてこないし、メールのやり取りをたまにするぐらい。
(珍しい……どうしたんだろう)
ふと、胸騒ぎを覚える。
ここ最近、ずっと胸騒ぎや嫌な予感がしたりする。
電話の内容が嫌なことじゃなければ良いけれども思いながらも、電話に出てみた。
「もしもし?橘、どうした?」
『和泉君……』
橘の声が、微かに震えている。
涙声でもあり、思わず目を見開かせた。
「どうした?何かあったのか?」
驚いてしまって声が上ずる。
すると台所に立っていた隆さんが不思議そうな表情を浮かべてこちらを見ていた。
『ヒナ、タケミチ君にふられちゃったぁ……』
その言葉に目を見開かけ、固まる。
「……は?」
『ふられちゃった』
電話の向こうから嗚咽が聞こえてきた。
橘の言葉に私は数秒固まってしまっていた。
だって、あの武道が橘を振ったと言うのだから。
あの武道が、橘を何よりも大切にしていた武道がだ。
嘘だろう。
『ごめんね、急にこんな事で電話しちゃって……。でも、一応報告しなきゃと思って……エマちゃんにも伝えようかなと思ったけど……』
「橘、今どこにいる?」
『え……?あ、家の近くの公園……』
「今から行くから。寒いから家の中に入ってな」
『え、いいよ、ただ報告しようと思って』
「良いから。すぐに行くから」
橘の返事も聞かずに電話を切る。
彼女の家は前に一度送ったことがあって知っている為、記憶を手繰り寄せながらコートを掴む。
「すみません、隆さん。少し出かけてくるので、夕ご飯先に食べててください」
「何かあったのか?」
「……橘から電話があって」
「橘って……ヒナちゃんだよな?タケミっちのヨメの」
「はい。武道になんか、振られたってその報告の電話だって言ってきたんですけど、ちょっと話聞いてきます」
「え?タケミっちが振った?え、あ、とりあえず気をつけろよ!」
「はい!」
コートを着込んで、マフラーを巻いてから三ツ谷家を飛び出す。