The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
「ごめんな。ソイツら、美人が好きでさ」
「へ、へぇ……」
女の子なのに美人好きとは…。
というか美人と言われているようだけど、俺は照れることは無いが困る。
美人ですね顔が整っていますね。
そんなセリフは媚びを売るヤツや、神澤家へ入り込もうとしている人間が俺に言ってくる人間がよく吐くセリフ。
(だから嫌いな言葉でもあるのに……)
クラスメイトとかにも言われる。
だけど大半は上記の奴らと一緒で、唯一言葉を信じられるのは山岸達に武道や橘だけ。
(あと修二達だけ。だから…信用しないのに……この人たちの言葉一つ一つはなんで暖かいんだろ)
胸が暖かい。
なんだろうこの感覚…と思っていれば、三ツ谷先輩が俺の顔を覗き込んでいた。
「な、なんですか?」
「いや…ボーとしてたから気になったんだよ。ルナマナ、お前ら風呂に入ってこいよ」
「「えー!!」」
「えーじゃねぇ!ほら、入ってこい!」
イヤイヤと言ってたルナマナちゃんだけど、三ツ谷先輩の言う通りに着替えを持ってお風呂場へ。
そしてこの場には三ツ谷先輩と俺の2人っきり。
「あー…和泉」
「はい?」
「嫌じゃなきゃ、なんで男装しているとか聞いても良いか?」
なんかこの人、本当に言葉巧みに話させようとするよな。
俺はそう思いながらも、三ツ谷先輩になら別に話しても良いかと思ってしまった。
きっとこの人が害ある人間ではない。
そう思ったからだろう…と思いながら、少し重めに息を吐いた。
「家を継ぐためにです。ウチの家、変な仕来りがあって当主の長子が女ならば男として育てろていう」
「…仕来り」
「それで俺の父親は家の当主で、俺は長子になる。なので物心着く時から男装をしています」
「跡を継ぐって…嫌じゃないのか?」
「そうですね…。別に嫌って訳じゃないんですよ…勉強と男装していれば後は自由にさせてくれる。それに俺は約束を守る為にも跡を継ぎたいから……」
「約束?」
思わず約束の事を口にしてしまった。
そう思いながら、開いていた口を紡いでから三ツ谷先輩の瞳を見ると無表情に近い表情。
「育ての母親、叔母と約束したんです。跡を継いで蔑ろにされている分家を助けるんだって……」
「分家?」
「はい。俺の家、本家と分家があるんですけど分家は本家から蔑ろされてます」