The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「なら、無理に出席しなくてかまいません。恋人と過ごす方が有意義でしょう。もう遅いのだから寝るのですよ」
それだけを言うと美里は歩いて行ってしまう。
彼女の揺れる着物を眺めながら和泉は呆けていたけれど、直ぐに正気に戻った。
母らしくない。
何時もなら祝いの席は大事だから、他の友好関係な会社の重鎮と友好的になれと言うのに。
「い、一体何が……」
父もそうだが、両親達がいつもと違ってきている。
それに困惑しているのは和泉と本家の親族達だ。
和泉への接し方が変わってきた。
どんな心境の変化なのだろうか。
そう思いながら和泉は自室へと戻った。
「何時もの母さんと父さんじゃない……」
ベッドに転がりながら、両親達のことを考える。
だがいくら考えても何故、両親達が変わってきたのか分からずにそのまま和泉は眠りにつくのだった。
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ー12月24日ー
世の中はクリスマスイブで煌めいていた。
恋人達は明日の為プレゼントを購入したり、家族はクリスマスケーキを予約したり。
そんなクリスマスイブ、和泉は一足先早く誕生日プレゼントを三ツ谷から受け取っていた。
「一足先早いけど、誕生日プレゼント」
綺麗な包装されたプレゼント箱に和泉は目を輝かせる。
「あ、ありがとうございます。隆さん……!」
「はは、嬉しそうだな」
「嬉しいに決まってるじゃないですか。本当にありがとうございます。明日、着てきますね」
「ん、楽しみにしてる」
三ツ谷は喜ぶ和泉を見つめながら、嬉しげに目を細める。
こんなにも喜んでもらてるなんて思っていなかった。
明日、彼女が手作りしたワンピースを身につけた姿を見るのが楽しみで仕方ない。
彼女への誕生日プレゼントなのに、自分のプレゼントみたいだと思ってしまう。
「靴も用意してりゃ良かったな……」
「あ、靴なら……実は祐介おじさんから贈られたものがあるんです」
「祐介さんから?」
「黒いショートブーツなんですけど」
昨夜、祐介から誕生日プレゼントとして黒の踵が少し高いショートブーツを貰っていた。
女の子らしい靴を持っていないと零したところ、贈られたのである。