The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「気にしすぎなのか…?」
稀咲といたのがどうも不安である。
因縁の相手と元敵である二人と何を話していたのか…考えれば考えるほど悩んでしまう。
頼むから嫌なことがなければいいのに。
和泉は深く息を吐き出しながら家へと帰宅した。
「ただいまかえりました」
前なら無言で入るところだが、祐介達が住みだしてからは声をかけるようになった。
「おかえりなさい」
ビクリと和泉は肩を揺らす。
まさか、返事をしてきたのが母である美里であったとは。
「母さん……」
あれ以来、母とは話していない。
元々話すことは少なく、他の家族たちと比べたら関わりなんて少なすぎる関係性。
和泉にとって、母親というのはよく分からない生き物。
褒められたこともなければ、抱きしめられた記憶も、愛情の籠った言葉もかけられたことが無い。
「……ただいまかえりました」
和泉が帰宅して、出迎えられた事なんてほとんど無い。
それなのに何故今日は出迎えに来たのだろうかと目を細めながら、母を見つめる。
「貴方、誕生日には予定があるのですか?」
「……へ?」
「恋人と過ごすのですか?」
「え、あ……は、はい……」
もしや、誕生日の日は予定を開けろと言われるのだろうか。
また知りもしない会社の重鎮や親族たちの『和泉の誕生日祝い』という宴会に出されるのだろうか。
それだけは嫌だ。
三ツ谷と過ごしたい。
和泉はほんの少し警戒しながら母を見つめれば、彼女は無表情のまま瞳を閉じて頷く。
「わかりました。楽しい時間を過ごしなさい」
「……へ?」
「勝昭さんからは私が話しておきましょう。恋人と楽しい時間を過ごしてきなさい」
「ちょ、ちょっと待ってください、母さん」
背を向けて歩き出そうとした母を和泉は呼び止めた。
「何ですか?」
「何時もの、宴会じゃない……祝いの席には出なくて良いんですか?」
元々出ない予定だったし、怒鳴られても無理矢理出席しないつもりだった。
だが、まさかこんな事を言われるとは思っていなくて和泉はかなり驚いてしまう。
「かまいません。貴方、あの祝いの席は嫌いでしょう」
「え、ええ……まぁ」