The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「たく…そんな事言われたら、仕方ねぇなってなるじゃねぇか……」
「え?」
「12月25日。水族館でデートしような。それと、これらオレからのオネガイなんだけど」
三ツ谷の言葉に和泉は少しだけ首を傾げる。
お願いとはなんだろうと思いながら、首を上に向ければ三ツ谷は小さく微笑む。
「オレが作ったワンピース、誕生日の時に着て欲しい」
「ワンピースを?」
「誕生日プレゼントだけど、前日に渡すから着て欲しい」
和泉の誕生日に、自分が作った唯一のワンピースを身につけてほしい。
それが三ツ谷の欲望であり願いであった。
「かまいませんよ?どんなワンピースが出来るのか、楽しみにしてます」
「ん、楽しみにしてて」
彼女がよく似合うワンピースを仕立てよう。
三ツ谷はそう思いながら、自分の腕の中にいる和泉を優しく抱き締めた。
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その日の夜。
和泉は流石にそろそろ家に帰らなければ……と三ツ谷の家を後にしていた。
実はと言うとメールで祐介から帰るのを催促されていた。
親戚としてしは、男の家に何日も泊まるのは心配ということ。
束縛はしないが、せめて何日かは帰ってきてくれと言われたのである。
(父さん達なら絶対言わないし、心配しないことなのにな)
だが、心配されるのが何処か嬉しかった。
跡を継ぐ事だけ心配され、自分のことは心配されて来なかった和泉にとっては些細なことでも嬉しかったのだ。
「……ん?」
橋の近くに足をかけた時、見知った顔が見えた。
武道と千冬、そして半間と稀咲の4人の姿に和泉は眉を寄せる。
珍しい組み合わせだ。
珍しい所の話ではない。
稀咲に関しては、武道と千冬は毛嫌いしているはずだ。
「おい、何してる」
早足で近付くなり、和泉は4人に声をかける。
すると武道と千冬は目が飛び出すのでは無いか…そのぐらい目を見開かせて驚いていた。
「あれ〜、和泉じゃねぇか。奇遇だな、こんな所で会うなんて」
「お前らが一緒だなんて珍しいな。何してるんだ」
何か嫌な予感がする。
和泉はそう思いながら4人を見ていれば、武道と千冬はアタフタとしていた。
「な、何でもねぇよ!!な、千冬!」
「お、おう!」