The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
産まれてくる事を望まれた訳じゃない。
きっと、女が産まれてくると知った本家の人間達や両親は落胆したはず。
「和泉、今年の誕生日どうすんの?いつも、何処か行ってるけど……」
「あー……そう、だな」
中学に上がる前、本家の連中に言ってお祝いはしなくていいと言ってから誕生日会のような集まりは無くなった。
その代わり、誕生日の日はフラりと宛もなく放浪しているのが多い。
「オレと過ごすよ」
「え?」
隆さんが私の目の前に立ち、柔らかい微笑みを浮かべる。
「オレと過ごそう、誕生日は」
「……隆さんと?」
「そ。嫌だ?」
「い、嫌じゃないですけど……良いんですか?」
「彼女の誕生日祝えねぇ彼氏なんて居るわけねぇだろ。というか、オレが一緒にいてぇの。何処に行くとか、何をするとか決めようぜ」
今年の誕生日は一人で過ごさなくて良いらしい。
その事に嬉しさが込み上げてきて、目頭がじわりと熱くなるのを感じた。
「少女漫画みてぇ……!!」
「え?」
「あ、ごめん。オレ、少女漫画読んでるから」
千冬が何故かキラキラした眼差しで見てくる。
「和泉、三ツ谷君と良い誕生を過ごせよ!」
その時、武道の違和感を勘づいていればよかった。
そう思ったのは後からだった……。
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その夜、夕ご飯を食べ終えたあとのこと。
隆さんは佐野先輩と一度柚葉に会いにいくと言い、三ツ谷家を後にしていた。
「ルナ、イルミネーション見に行きたい」
「イルミネーション?」
「マナも見に行きたい!」
ルナちゃんとマナちゃんに絵本を読んで上げていると、突然ルナちゃんがそう言葉を零した。
そういえば、クリスマスが近くなり、街中イルミネーションで埋め尽くされている時期。
イルミネーションなんてちゃんと見たのはいつだろうか。
鳴海ねぇと真一郎君が生きている時じゃないだろうか…と懐かしんでいれば、ルナマナちゃんが期待を込めた瞳で見てくる。
「あー……じゃあ、隆さんが帰ってきたら聞いてみようか」
「うん!!」
「イルミネーション、イルミネーション!」
「お兄ちゃんいつ帰ってくるんだろう!」
「早く帰ってきてー!」
二人は嬉しそうに騒ぎながら、時計を見たり玄関を見たりと隆さんの帰りを待っていた。