The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「結局、八戒は黒龍に行っちまうって話だな」
「うん。でも1コわかった。きっと八戒は柚葉ちゃんの為に大寿を殺すんだって事」
「……ひとつ気になる」
「うん?どうした、和泉」
「柚葉は、大寿に何をさせられていたんだろう」
大寿に何かを命令されて、柚葉は何かをさせられていた。
それが何なのか分からないけれど、恐らく『良いこと』では無いことは分かる。
八戒は今までそんな柚葉を守ってきた。
大寿への怒りと恐れが溜まりに溜まり、殺害するのだろうか。
そう思いながら、前を歩いていた八戒と隆さんへと視線を向ける。
「タカちゃん、ありがとう」
「……八戒。どんなに苦しくても、力は守る為に使えよ」
「タカちゃん」
柚葉は解放され、私は黒龍に無理矢理勧誘される事は無くなった。
だが八戒は黒龍へと入ることになった。
本当にこれでいいのだろうか。
このままで良いとは思わない、まだ不安がある。
「じゃあ、タカちゃん……いつか、また会えたら」
「……ああ」
隆さんは『金輪際関わらない』と宣言した。
八戒とは二度と会えないかもしれない……幼馴染だろうに。
幼馴染と二度と会えないのは辛い。
「そういえば、もうすぐでクリスマスだな」
八戒と別れたあと、隆さんがポツリと呟く。
色々あったせいで気が付かなかったけど、確かにもうすぐでクリスマスだ。
「和泉の誕生日、もうすぐだな」
「……あ」
「なんだ、忘れてたのか?」
「あ!!そうだ!和泉の誕生日じゃん!!」
忘れていました、と言う前に武道が叫ぶ。
その叫びに驚いてしまったが、確かにクリスマスは私の誕生日である。
すっかり忘れてしまっていた。
クリスマスの誕生日は、あまりいい思い出がない。
両親に『おめでとう』という言葉は一度もかけられたことがない、擦り寄ってくる奴らの心のこもっていない馬鹿みたいなプレゼント。
ケーキなんて鳴海ねぇと秋にぃがいた時しかなかった。
(思い出はそこまでない……けど、いい思い出もあるはある)
真一郎君達が祝ってくれたりした。
誕生日の日は、本家に居なきゃいけなかったからその当日は祝えなかったけど違う日に祝ってくれたりした。
分家の親戚たちも祝ってくれた。
(悪い思い出ばかりじゃないけど……好きじゃない、誕生日は)