The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
ちらりと武道が千冬の方を見ているので、私もつられて千冬の方へと視線を投げる。
グッ……とグーサインをしているが、不安でしかない。
胃が痛くなりそうなぐらいに不安である。
『“肝”はマイキー君!ボスであるマイキー君さえ八戒の東卍離脱を受理しなければ事はうまく収まる!』
『なるほど!』
『そしてオレはマイキー君の弱点を知っている!』
『あ、ダメだ……不安でしかない。嫌な未来になる可能性が出来た』
はぁ……と溜息を吐き出しながらも、取り敢えず事の様子を見守ることにした。
武道がどうなるかなんてもう、知らない、勝手にしろという気持ちである。
「マイキー君。一旦落ち着いて考えましょう!これでも食べて!」
『プランA!』
「どら焼きです!!マイキー君の大好物!!どうぞ!!」
武道が取り出したのはどら焼き。
確かに佐野先輩はどら焼きが好物ではあるが、それで上手くいくとは思わない。
「いらね」
案の定、佐野先輩は興味無さげにどら焼きを投げ捨てた。
「邪魔」
「ほらな……上手くいかねぇよ、阿呆」
「へ?」
「ふざけてんのか?テメェ!!」
「へ!?いえっ、ぜんぜん!」
しかも龍宮寺先輩には怒鳴られる始末。
こんなので佐野先輩が『じゃあ、八戒の東卍離脱は却下する』なんて言うわけがない。
『絶対失敗する。100%失敗する』
『分からねぇだろ!心配するな、タケミっち!もしも万が一!失敗しても“プランB”がある!困った時はこのメモを見ろ!』
『それも不安でしかないんだが?千冬ってポンコツ?』
『うるせぇよ!和泉!!』
ゴソゴソと武道は涙目になりながら、ポケットをまさぐり始めた。
恐らく千冬があの夜に預けたメモを探しているのだろう。
メモを取り出した武道は、ページを捲り出すのでちらりとメモの覗き込んでみた。
そして乾いた笑みが出る。
『気合い』
書かれてたのはその文字。
慌てた武道が千冬へと視線を向ければ、千冬はグーサインを出しているだけ。
「阿呆ばっかり……」
こんな計画で八戒の離脱を阻止出来るはずがない。
だが私もどうすればいいのか分からない。
このままでは12年後、武道が言っていた最悪の未来が待っているだけ。
抗争にもなりそうだし、全てが悪い方に行きそうな状況。