The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
風呂場に入って、ぐるっと見渡してからシャワーの蛇口を捻った。
そしてお湯を被りながら麦茶を流していき、申し訳ないがシャンプーを使わせてもらう。
(あ、なんかこのシャンプー匂いが落ち着く)
俺が使っているシャンプーは、俺の行きつけの店で購入している物だ。
何せ『髪の毛は女の命とも言えるから、大切しなさいね』と鳴海ねぇが言ったから。
「椿油持ってきてないや…」
椿油は俺が髪の毛を手入れする為に使っている。
鳴海ねぇが誕生日にくれたヤツをずっと愛用して使用しているのだ。
するとガチャッと脱衣所な扉が開く音が聞こえた。
樹脂パネルの扉に人影が見えて、思わず体が跳ねていると声が聞こえる。
「和泉!オレので悪いけど、スウェット置いてるからそれに着替えてくれ。下着は濡れてなかったか?」
「あ、濡れてません!」
「なら良かった。ホント悪かったな……ごめんな」
「いえ……」
すると三ツ谷先輩が脱衣所から出ていく音がした。
そしてゆっくりと風呂場から出ると、スウェットが置いてあり隠していたウィッグとかは見られてないようだ。
「……スウェット、デカイな」
身長差があるせいなのか、スウェットがデカイし袖とかも長いもんだ。
バスタオルで前を隠しながらウィッグを洗おうとした時である。
ドア向こうから足音が聞こえてくる。
その音に肩を跳ねさせてしまい、しかもその足音がドアの前で止まっているのだ。
「和泉!ちょっと入るぞ」
「……え!?ま、エ、ちょっと待ってください!!」
「いや、そのスウェットのズボンがゴム緩いんだ」
「ま、ま、まままっ!!」
ガチャッと音が鳴って扉が開く。
そしてズボンのスウェットを持った三ツ谷先輩が入ってきて、俺の体から熱が引いていくのが分かる。
「これかえ…………」
「………えっと」
これはもう無理だ。
だって長い髪の毛が見えてしまっているし、バスタオルで前側だけ隠してるけど谷間が見えてしまっている。
三ツ谷先輩を見れば、ピシリと固まっており目を大きく見開かせている。
そしてパサリとスウェットのズボンが落ちて、その場の空気が静まり返っていた。
「……あ、え……え」
「その…………え、と」
「な、な、ななななな!!??」
一気に顔を真っ赤にさせた三ツ谷先輩の悲鳴が響いた。