The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
ー翌朝ー
「首元がっ……!!」
「悪ぃ……」
翌朝のこと。
起きて直ぐに顔を洗いに行った私は、首元に大量のキスマークがあるのに気付いて絶句した。
犯人である隆さんは『悪ぃ』とは言っているが、顔は反省していないのが分かる。
何せずっとニヤついているから。
「でも、それで首元の痕はあまり気にならなくなったな」
「そうですけど……暫く包帯外せない……」
「こっち来いよ。包帯巻いてやるから」
「反省してないですよね」
「まぁな」
ルナマナちゃんが起きる前で良かった、見られてしまったら恥ずかしさでどうにかなりそうだ。
包帯で隠して、暫くは取らずに過ごすしかない。
「なぁ和泉。一つ聞きたいことがあんだけど」
「はい?」
「お前は黒龍に入りたい?」
その言葉に私は数回瞬きをする。
正直に思えば、黒龍に入りたいと思ったことは無い。
今の黒龍には。
「今の黒龍に入りたいとは思ったことがありません。でも……もし、初代のままの黒龍だったら、惹かれていたかもしれません」
「そっか。マイキーから話は聞いてたけどさ、初代の黒龍はカッケェチームだったって」
「かっこよかったです」
全てが煌めていたチームだった。
隊員達も素晴らしい人たちばかりで、そこで不良のカッコ良さもカッコ悪さも見た。
そう、八戒が隆さんに不良のカッコイイ所やかっこ悪い所を教えられたように私も真一郎君たちに教えられた。
「……でも、今の黒龍には初代のような魅了はないんです。汚くて、泥を被っているような」
「結構ひでぇ事言うな」
「事実なんですよ。だから入りたくないです……でも……」
でも、武道が人質に取られている。
拒否すれば、アイツの命がどうなるかなんて……考えたくもない。
「大丈夫だ」
「え?」
隆さんの顔を見ると、彼は何か決意したような瞳をしている。
揺るぎないその瞳を見て、私は少しだけ首を傾げていれば彼は小さく笑った。
「ほら、包帯巻き終わったぞ」
「あ、ありがとうございます……」
「さて、朝飯作るか。ルナマナ起こしてきてくれるか?」
「はい」
彼の言葉は私の不安を何故か拭いさっていった。
何故なのか分からないが、隆さんの言葉はいつも私の不安を取り除いてくれる。
「不思議な人……」