The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
本当は言いたくなかったが、これ以上キスされたら大変な事になりそうなので折れることにした。
「嬉しかったんです」
「嬉しかった?何が?」
「隆さんが、私のために怒ってくれていたことが……嬉しかったんです」
今まで私の為に怒ってくれた人は少ない。
親族は私の為にというよりも、世間体を気にしてということが多かったから。
だけど……。
(隆さんは私の為に怒ってくれていた……それが、とても嬉しい)
隆さんへと視線を向ければ、彼は目を見開かせていたが直ぐに柔らかい笑みを浮かべていた。
そして彼は腕を伸ばしてきたかと思えば、そのまま私を抱き締めてくる。
突然の行動にビクッと身体が跳ねる。
だけど、驚いたのはほんの一瞬だけで、直ぐに隆さんの身体に自分の身を委ねた。
「大切な恋人の為に怒るなんて、当たり前のことだろ。でも、こんな事で喜んでもらえるなんて思ってなかったなぁ」
「こんな事だなんて……」
「あー……可愛い。今日、帰したくねぇなぁ」
その言葉を発したのと同時に、隆さんの温かい手のひらがシャツの中に入ってくるのが分かった。
「ちょっ!!ダメです!」
慌てて隆さんの不埒な手を掴めば、彼は不満そうな表情を浮かべる。
だがそんな顔をされても、止めないという選択肢は無い。
「ルナちゃんとマナちゃんがいるんですよ……駄目です」
「……じゃあ、ルナマナ達がいなきゃいいのか?」
「え?あ……え、まぁ、いなければ……」
隆さんは私の言葉を聞くなり、笑みを浮かべた。
「じゃあ、明日。明日休みだろ?ルナマナが出掛けたら」
「え……」
「駄目?」
近距離に彼のシルバーパープルの瞳があった。
私の心を覗き込んでいるかのような、そんな感覚に陥る。
そして『NO』と言えない雰囲気に、私は唇を少しだけ噛みながら小さく頷いた。
別に嫌というわけじゃない。
隆さんに抱かれたあの日、嫌という気持ちより至福と心地良さを感じたから。
「じゃあ、今日泊まっていく?」
「……泊まります」
「あ、そうだ。提案なんだけどよ」
「提案?」
隆さんは未だに私を抱き締めながら頷いた。
「和泉、オレの家に寝巻きとか服とか持ってこいよ。で、置いとけば?」
「……良いんですか?」
「おう」