The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
純粋に嬉しいと思ってしまった。
喜んでいる場合じゃないのはよく分かっているけれども、心配してくれている事が、私の為に不機嫌になってくれた事が嬉しいと思ってしまう。
口元が緩まないように、頬の内側を噛む。
喜んでいたら、隆さんに引かれてしまうかもしれないと思いながらオムライスを食べていく。
「なんか、ニヤついてるけど……どうした?」
「へ!?」
「自分では気づいてねぇの?さっきから、なんか嬉しそうにしてるけど」
隆さんの瞳はさっきまでの不機嫌そうな物がない。
ただ不思議そうにしていて、私は食べていたオムライスが詰まりそうになる。
「あ、いや……なんでも、ないです」
「嘘つけ。なんかあるんだろ?」
「いや、本当に……なにも……」
視線を逸らし、スプーンを咥える。
すると衣服が擦れる音が聞こえて、同時にこちらに近づく足音が聞こえて肩を跳ねさせた。
首を音が聞こえる方へと向ければ、隆さんが私の隣に座っていた。
「あ……」
「言わねぇの?それとも言えねぇの?」
「いや……あの、気のせいじゃ……」
「気の所為?」
じっと見つめてくる瞳にたじろいでしまう。
これは多分、本当の事を言わなければずっと詰め寄ってくる。
だけど言えない。
(言ったら……恥ずかしいことになりそう)
そう思っている時だった。
唇に柔らかいものが触れ、驚いて目を見開かせていれば唇を生暖かくて柔らかいものが舐める。
それが隆さんの舌だと気付いた瞬間、逃げ腰になったが直ぐに腰に腕が回されて引き寄せられた。
「たか、しさ……!んっ」
名前を呼び終える前に唇が塞がれる。
何度も角度を変えて啄むようにキスをされて、唇の間から息が漏れた。
「ふっ……ん、ふぅ」
「言わねぇなら……言わせるようにしようか?」
やっぱり隆さんは意地が悪い。
ニヤリと笑みを浮かべて、面白そうに細められた瞳に背筋がゾクリと震えた。
このままでは危険だ。
キスをされ続けたら声が漏れてしまい、隣の部屋にいるルナマナちゃんに聞こえてしまう。
(止めなきゃ……)
声が聞かれてしまったら恥ずかしいだけじゃ済まない。
私は慌てて両手で隆さんの口を塞いだ。
「い、言いますから……!」
「ホント?」
「本当です……だから、キスは止めてくださいッ」