The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
ー和泉sideー
佐野先輩は無表情だった。
龍宮寺先輩も無表情だったが、隆さんだけは険しい表情を浮かべている。
かなり気まずい雰囲気に息を飲みながら、ヒリヒリと痛む喉を撫でた。
「八戒から連絡があったんですか?」
「三ツ谷に連絡があった。東卍を抜けて黒龍に入る、自分の兄貴が黒龍の総長だって。で、その兄貴がタケミっちをボコした事や全部ね。今度、幹部会議があるからそこで改めて話してもらうことになったけど」
「でも、和泉の首の件は聞いてねぇ」
冷静に話す佐野先輩と違って、隆さんは何処か怒りを含んだ声をしている。
普段はこんなに怒りを顕にしないのに、今はとてもイラついているのがひしひしと伝わってくる。
「落ち着け、三ツ谷。イズミっちが萎縮しちまうだろ」
「……分かってる」
「で、イズミっち。その首はどうしたわけ?八戒の件と関係してんの?」
隠すことも出来ないし、隠しても無駄なこと。
私は柴家で起きたことを洗いざらい話していった。
話している最中、隆さんは更に険しい表情をしていたが佐野先輩と龍宮寺先輩も険しい表情になっていた。
当たり前かもしれない。
自分達が知らない所で東卍に入ったばかりの隊員が、黒龍に勧誘されていたのだから。
「なるほどな……タケミっちを脅しに使われてるわけか」
「はい」
「これが初めてなわけ?黒龍に勧誘されたのは」
「……いえ。実は結構前から勧誘はされていたんです。大寿や九井とか青宗とか」
「九井、青宗?イズミっち、黒龍の隊員と親しいのか?」
龍宮寺先輩は少しだけ驚いた表情をしていて、私は『あ……』と思わず声を漏らす。
そういえば、彼らは私が青宗や九井と腐れ縁であることを知らなかったし、私は説明していなかった。
「あー……実はその、黒龍の2人の隊員とは腐れ縁で」
「だから、黒龍に勧誘されてたのか」
「はい。まぁ、そのあとは……金と地位を利用しようと思って声はかけられてました」
3人は険しい表情のままだった。
重苦しい空気の中、この空気に似つかわしくない声が隣の部屋から響いてくる。
息苦しい。
何となくそう思っていれば、佐野先輩が小さくため息を吐き出したのが聞こえてきた。
「ケンチン。幹部達に今回の件伝えて」
「了解」