The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「今日は帰った方がいいよ。大寿が戻ってきたら、さっきより酷いことされるかもしれねぇから」
「でも……オマエらは」
「オレらは平気。そんなしょっちゅう暴力振るわれてるわけじゃないからさ。それに、和泉に何かあればタカちゃんに申し訳が立たないから」
「八戒の言う通りだ。帰りな……和泉。ごめんな……色々」
柴姉弟の言葉に和泉は何も言えず、柴家を出た。
大寿の事をどうにかしてやりたいが、武道を人質に取られている以上、下手には動けない。
それに黒龍の総長と争うことになれば、東卍にも迷惑がかかってしまう。
歯がゆさを感じた和泉は柴家の玄関前に立った。
鋭い痛みを帯びている首をさすっていれば、後ろから足音が聞こえてくる。
振り返れば、青宗と九井が立っていた。
「そういえば和泉、オマエ……恋人でも出来たのか?」
「は?」
唐突な九井の言葉に和泉は目を僅かに見開かせる。
「この前、オマエが女の格好で東卍の弍番隊隊長の三ツ谷隆と歩いてたのを見たぜ。で、アイツは恋人なのか?若が言ってた『タカちゃん』は三ツ谷隆のことだろ?」
「盗み見か、狐目」
「偶然見ちまったんだよ。で?恋人なのか?」
「そうだけど」
和泉が肯定した瞬間、青宗は目を見張った。
だがすぐ様その瞳は悲しげに伏せられたが、直ぐに何時もの無表情に変わる。
「へぇ、あの和泉に恋人ね。何時かお会いしてぇな、オマエの恋人様に」
「誰がオマエに会わせるか……それより、青宗」
和泉は手を伸ばすと、青宗の赤く腫れた頬を指で優しく撫でた。
「頬、大丈夫か……?」
「……このぐらい平気だ」
「手当、しろよ」
「ああ。和泉……オレは、オマエに黒龍に入って欲しい。大寿のやり方を肯定する気はねぇけど、どんな事をしたってオレはオマエを手に入れたい」
「……青宗」
「……黒龍に入ってくれるのを待っている」
その言葉に和泉は返事をせずに、彼らに背を向けてゆっくりと歩き出した。
青宗はそんな彼女の後ろ姿を見送りながら、殴られた頬をさするのだった。
「……武道を人質に取られている以上、黒龍に入らなくちゃならないのかな」
夜道、和泉は小さく呟いた。