The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
意識が朦朧とし出す。
首を絞め続けられているせいで、息が上手くできなくなっているせいだ。
このままでは意識が落ちる。
そう思った時、動いたのは青宗であった。
「大寿、手を離してくれ。和泉には手を出すな」
アレだけ大寿の言う事には従順だった青宗が、和泉を助けようとしている。
その事に、八戒と柚葉は大層驚いてしまい、目を丸く見開かせていた。
大寿もまた驚いていた。
だが直ぐにその表情は不機嫌なものへと変わっていき、和泉の首を絞めていない方の手で青宗の頬を思いっきり殴り飛ばす。
「乾ぃ。誰に指示してんだぁ、テメェは」
「っ……」
「おいおい、ボス。イヌピーはただ和泉を心配してるだけだぜ。それにそろそろ辞めておいたほうがいいぜ。和泉が死んじまう」
九井の言葉に大寿は舌打ちをして、和泉の首を離した。
すると和泉はそのまま崩れ落ちていき、激しく咳き込んで掴まれてきたく首を抑える。
「和泉!!」
「ゲホッ!!ゲホッ、ゴホッ……!」
「気が削がれた。おい、神澤。よぉく考えるんだな。自分のことを優先するのか、花垣武道の命を優先するのかをな」
脅しとも捉えれる言葉を放った大寿はそのまま、足音を鳴らしながら家から出ていった。
「和泉、大丈夫!?」
「ん……なんとか」
「首、見せて……」
柚葉は和泉の首を見て目を見開かせた。
くっきりと細い首に残るのは大寿により首を絞められた跡。
赤黒くなっていて、痛々しいものだ。
「……塗り薬塗ろう。目立つから包帯巻いた方がいいかも」
「ん……」
「ちょっと待ってて、救急箱取ってくるから」
慌てながら柚葉は救急箱を取りに行き、和泉はその間になんとか呼吸を元に戻そうとしていた。
勢いよく咳き込んだせいで喉と肺が痛み、首も酷く痛む。
そんな時、青宗がゆっくり近寄ってきた。
殴り飛ばされたせいで、頬は赤く腫れていて口からは血がほんの少し流れている。
「青宗、オマエ馬鹿だろ……あの場面で私を庇ったら殴られるぐらい分かってただろ」
「……和泉が苦しむのは見たくなかった」
まるで捨てられた子犬のようにそう呟いた青宗に和泉は小さく笑った。