The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
初めての他所様の家での食事は以外にも楽だった。
美味しくて暖かくて、そして人として何処か安心してしまう人達に思わず気が抜けたけど。
豪華でもない、高級とかじゃない。
ただ暖かい家庭に出てくる料理に俺は何故か、嬉しくて久しぶりに本当に『美味しい』と感じた。
「「ごちそうさまでした!!」」
「ごちそうさまでした」
「お粗末さま」
食べ終えてから手を合わせる。
するとルナマナちゃんはモコンを操作しながら、テレビチャンネルを変えていた。
そして三ツ谷先輩は食器を持って台所に。
「あの、三ツ谷先輩。俺洗うの手伝います」
「ん?いや、別に大丈夫だぞ」
「いえ。流石にタダ飯は……」
「いや…礼と謝罪なんだから」
「食べさてもらったお礼したいんで」
「和泉って……ホントお堅いなぁ」
❈❈❈❈❈❈❈❈❈
水の音と食器を拭う音。
そして俺の震える手と今にも落としてしまいそうな、洗剤がついた食器。
隣では心配そうな表情の三ツ谷先輩の姿があった。
「なぁ和泉。お前、食器洗い慣れてねぇだろ」
「……ウチ、お手伝いさんがしてくれてて……食器洗いなんて学校の調理実習でしか……」
「まじか…。他の家事やった事あるか?」
「………畳まれた洗濯物を収めるぐらいと、部屋の掃除ぐらいは……」
「……まじか」
今まで家事なんてした事は無い。
皿洗いなんて家にいるお手伝いさん達がするし、部屋の掃除はするけどお手伝いさんが殆どしているのだ。
つまり家事は1人では絶対何も出来ない。
恥ずかしい事にそういう人間であり、隣にいる三ツ谷先輩は目を見開かせていた。
「料理は?」
「出来ません……」
「…家事能力ゼロだな。それでもし一人暮らしする時きたら苦労するぞ〜」
1人暮らし。
その言葉に俺は手についた白い泡を見つめてから、手を少しだけ動かした。
(あの家からはその内出て1人暮ししたいけど……許されるのだろうか)
あの家から出れるだろうか。
修二とかから『出してやる』と言ってくれたが、アイツの『出す』は家から逃げるという意味だし。
「今度、食器洗いの仕方教えてやる。洗濯の仕方も」
「え?良いんですか?」
「これも礼て事で。なんか和泉は教えてやんねぇと、この先1人で生きていけ無さそうなか気がするんだよな」