The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
大寿はニヤリと笑い、その腕を振りかざそうとした。
「兄貴!!」
八戒がその腕を止めた。
「やめてくれ」
「あ"!?」
「お願いだ!」
彼の声は僅かに震えていた。
そんな八戒は和泉は眉を寄せながら見てから、視線を大寿へと向ける。
今にも殴りかかってきそうだが、今は八戒の言葉で動きが止まっているだけ。
「ハッカーイ。人にモノを頼む時は交換条件が必要だろ!?ちゃんと見合うモノを差しだせよ。じゃなきゃあ、花垣武道はここでくたばる」
「八戒、余計な事は言うな!」
和泉はなんとなく嫌な予感がしていた。
大寿の『交換条件が必要』という言葉に、八戒が何を言うのか予想がなんとなく出来ていた。
だから、それを言わせない為にしたが……。
「東卍を……やめるよ」
「八戒!」
「兄貴を支える為に、黒龍に入る。だからタケミっちを離せ!和泉に手を出すな。交換条件だ!!」
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「オマエは馬鹿だよ、本当に」
「うん」
空が茜色に染まる中、八戒は武道をおぶっていてその隣に和泉と日向が歩いていた。
武道は殴られたせいで意識が飛んでいたのである。
「柴大寿ぐらいなら、俺が何とかできた」
「でも、もし和泉になにかあれば……タカちゃんに申し訳が立たないからさ」
「馬鹿が」
「ごめん」
八戒は言葉通り、東卍を辞めることになる。
三ツ谷がその事を知れば、どんな顔をするのか……和泉は想像出来なかった。
たださえ、場地を失ったばかり。
それなのに弟分のように可愛がっていた八戒が東卍を抜けることになれば……。
そんな時、武道がゆっくりと目を開けた。
「ん?」
「気づいたか」
「あん?」
「タケミチ君!」
「武道、意識戻ったか……」
「よかったー心配したんだよ!」
「ヒナ……和泉……」
武道は安堵した表情の2人を見て、何が起こったのかをゆっくりと思い出した。
柴大寿に殴られた事や、八戒が自分を守る為に東卍を辞めると言ったことを。
「ごめんな、八戒。オレのせいで東卍を……」
「オマエのせいじゃねぇよ。前から決めてたんだ。それより柚葉をかばってくれてありがとうな。ビックリしたろ?黒龍の総長がオレの兄貴で」
「……うん。……ん?」