The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
何故……と思っている時だった。
いつの間にか青宗の後ろに柚葉がいて、彼女は勢いよく身体を捻ったかと思えば、ふわりと身体を浮かせて青宗の顔に蹴りを入れる。
「いっ!?」
「弟に手ぇ出すんじゃねぇよ!」
「柚葉……」
初めて見たが、柚葉は喧嘩が出来るのかもしれない。
和泉はそう感じながらも、九井と青宗を見ながら辺りを警戒した。
「もうやめとけイヌピー。ボスの妹弟だ」
「オレは大寿には忠誠誓ってっけど、コイツらに調子にこかれる筋合いはねぇぞ。女だとかは関係ねぇ。どっちが上か教えてやる。和泉以外、テメェら全員殺してやる」
初めてみたが、青宗は仲間だと思っている人間以外には残酷だなと和泉は感じた。
何時もは犬のような懐きようでなあるが、敵だとみなした相手には容赦がない。
そしてなにより、黒龍が変わっていた。
マイキーの兄であり、和泉の従姉妹である鳴海の恋人であった佐野真一郎の時代と根本的に違う。
「花垣!ここはアタシたちに任せて逃げな!ヒナちゃんを守れよ!和泉も!」
「俺は残る。ソイツらとは顔見知りだし……この数じゃ、柚葉達だけじゃキツイだろ」
「和泉……」
「武道、行きな」
促された武道は後ろ髪を引かれるも、小さく頷いてから日向の方へと視線を向けた。
「ヒナ、行こう!」
「タケミチ君、後ろ!!」
「え?」
日向の叫びに後ろを振り向いた武道たが、遅かった。
とある男が武道に向かって走ってきており、その腕が武道の首へと激突する。
「武道!?」
赤色の特攻服、白と青が混じりあった髪の毛。
そして何よりその体格……巨漢であるその人物に、黒龍のメンバー達が一斉に頭を下げ、八戒と柚葉の顔色が変わる。
「兄貴……」
「ドーはド突くのドぉぉ!!」
「柴……大寿ッ」
現れたのは10代目黒龍の総長であり、八戒と柚葉の兄である柴大寿である。
「ゲホッ、ゲホッ!!」
「ずりぃなテメェら」
「兄貴」
「楽しそうじゃねぇかよ!!オレも混ぜろ!!」
狂気的な笑みを浮かべた大寿は、ラリアットを決めた武道の胸ぐらを掴んで持ち上げる。
武道は意図も簡単に持ち上げられてしまい、空中に浮いてしまう。
「痛っ!」
「ヒャハハハハ!!」