The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
柚葉は小声で耳元で話しかけてくる。
チラリと私は橘を見てからゆるく首を左右に振った。
「知らない」
「そっか。じゃあ、余計な事は言えないね」
「何を言うつもりなのさ」
「三ツ谷の待ち受けが、アンタの写真ってこと」
身体が固まる。
知らなかった事実に驚いていれば、柚葉はニヤリと笑う。
隆さんが携帯の待ち受けを私にしている。
そんな事は知らなかったし、聞いたこともなかった。
「八戒が頼まれたんだってさ。待ち受け写真を変えたいけどやり方わかんないから教えてくれって。で、和泉の写真に変えてくれって。アンタには秘密にしてくれって」
「……知らなかった」
「顔真っ赤」
今日、隆さんの家に行ったら確認しよう。
だけど一体どの写真を待ち受けにしているのだろうかと思いながら歩いていく。
「家、もうすぐそこ」
八戒は機嫌良さげに顎でさす。
そこでふと、私はある事を思い出した。
柴大寿の事を。
柚葉と八戒の苗字は『柴』だ。
そして大寿の苗字も柴であり、2人と同じ苗字だ。
「なぁ、柚葉」
「んー?」
「お前に兄っている?柴大寿っていう…」
その問いに柚葉が目を見開き、少しだけ身体を固まらせる。
戸惑っているような、困惑しているような表情だ。
「柚葉?」
その時バイクの排気音が響いてきた。
音からしてバイクは何台もあるようで、この辺にバイクに乗っている人間でもいるのかと思っていたが、柚葉の顔色が変わる。
「八戒…ヤバい…」
「柚葉?」
「兄貴が帰ってきてる」
柚葉の視線を辿ってみると、そこには見た事のある特攻服を身にまとった男たちがいた。
BDの文字にドラゴンのイラストに白い特攻服。
「……黒龍」
「花垣、和泉…悪ぃ、今日は帰ってくれ」
「え?」
「柚葉、お前の兄貴ってやっぱり…」
「これはこれは」
柚葉に確認しようとした時、聞き覚えのある声がした。
その声の方へと視線を向けてみれば、そこには黒龍のメンバーの一人である九井が立っていた。
「“若”と和泉じゃねぇかよ!!」
「…ココ…」
「九井…」
「え…和泉、ココと知り合い?」
「……腐れ縁だよ。というか、お前こそ知り合いだったのかよ」
「それは…」
八戒は言葉を詰まらせる。