The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「お前ら酷いな。無言で帰ろうとするなよ」
「す、すんません……」
「タケミっち、先に帰っててくれる?オレ、和泉と話があるから」
「あ、うっす。じゃあ失礼しまーす。和泉、またな」
「あっ、おい……!」
武道は『ごめん!』と呟くと早々に帰っていく。
その場には私と隆さんとだけになり、私はなんとなく気まずくなって彼の顔が見られない。
そんな私の元にゆっくりと隆さんが近寄ってくるのが分かった。
「和泉」
「あ、……その、なんというか……」
言葉が出てこない。
こういう時、なんて言えばいいのか本当に分からない。
「告白されてる所、見たんだよな」
小さく頷く。
すると隆さんは私の手をゆっくりと握ってきて、慌てて顔を上げれば彼は小さく微笑んでいた。
「ちゃんと断った。大切な恋人がいるからって」
「聞きました……」
「断ったけど、嫌だった?」
「……告白されていたのが嫌なんじゃないんです。私が、女の子の姿で傍にいれたらと思って、普通の可愛い女の子だったらと思ったら」
「和泉は、可愛い女の子だよ。普通の、可愛い女の子」
「何処が……」
普通の女の子じゃない。
普通の女の子というのは、可愛らしくてお淑やかで喧嘩や殴り合いなんてしないはず。
私は普通の女の子からはかけ離れている。
「料理が苦手で、でも頑張って作ろうとして、家事も覚えようとする。料理を食べる時にすげぇ美味しそうに食べて、オレが手を握るだけで恥ずかしがって、キスしたら顔真っ赤にする普通に可愛い女の子」
「っ……」
「和泉は普通の女の子だ」
真っ直ぐな瞳で、そう言われてしまうと何も言えなかった。
そんな私に隆さんは優しく笑いかけてくれる。
「でも、普通の女の子になりたいの?」
「……だって、普通の女の子だったら、隆さんの傍に立っても……貴方と一緒に居て似合う子になれるから」
「……オレの為?」
ちらりと隆さんを見ると、何故か彼は凄く嬉しそうな顔をしていた。
目元を赤に染めていて、口元はニヤケそうになっている。
「隆さん……?」
「悪ぃ……ちょっと、嬉しくて」
「は?」
「だって、オレの為に普通の女の子になりてぇと思ってくれたんだろ?オレの為にって思ってくれたのが嬉しくて……」