The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
気まずそうな声色。
隆さんはどう返事をするのか悩んでいるようで、私はなんて返事をするのだろうと思いながらも、モヤモヤとしている自分がいた。
隆さんはモテるはず。
性格も良いし、何よりかっこいいところもある。
モテないなずがないのだ。
「悪ぃ。オレ、彼女がいるんだ」
静かになった空気の中、隆さんが少しだけ気まずそうに呟いていた。
「すげぇ、大切な彼女が。だからごめんな」
彼のその言葉がとても嬉しかった。
大切だと言ってくれたことが嬉しかったけれど、私までが何処か気まずい感じになってしまう。
彼氏に対しての告白の現場を目撃してしまったのと、なんだかモヤモヤしてしまう。
この場にいたくない。
なんとなくそう思った私は、中腰になりながらその場をゆっくりと離れていく。
後ろで武道が焦った様子で『和泉』と名前を呼ぶが、振り返らずに昇降口まで向かった。
「まさか、告白現場に遭遇するなんて……」
下駄箱まで向かえば、人はほとんどいない。
帰ろうか、どうしようかと悩んでいれば後ろから足音が聞こえてきた。
「和泉!」
「武道……」
「あー、そのさ、三ツ谷君ちゃんと断ってたし……」
「なんでお前が気まずそうなんだよ」
「いや、幼なじみの彼氏が告白されてるというのと知り合いの告白現場見ちまって……」
追いかけて来た様子の武道は、何処と無く気まずそう。
確かに知り合いの告白現場を目撃するのって気まずと言うか、なんというか……変な気分になるものだ。
「ま、でも良かったじゃん?大切なって言ってたの」
「まぁ……うん」
「なんでそんなに気まずそうなんだよ」
「……相手の子、普通の可愛い女の子だったなと思って」
そう、普通の可愛い女の子。
私はやっと女の姿でいても良いと許されたけど、未だに男装はしている。
高校入学するまで、学校やら表に立つ際は男装をしなければならない。
普通ではいられない。
その事が引っかかってしまい、【普通の女の子】が隆さんに告白している場面でモヤモヤしてしまった。
「オレにとって可愛い女の子はお前だけなんだけどな」
「っ!?」
「み、三ツ谷君!」
視線を下に下げていれば、隆さんの声がした。
ゆっくりと視線をあげていけば、少し困ったような顔をしている隆さんの姿。