The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「あれ?和泉には言ってなかったけ?」
「聞いてませんね……」
手芸とかは得意と聞いていたけれど、まさか手芸部の部長だったとは……と驚きながら家庭科室に入る。
家庭科室には色んな色の布やミシンに裁縫道具が溢れていて、まるで隆さんの家みたいだ。
「山田さん、そこさー半返し縫いの方がいいよ」
「あっ、はい」
「部長ー、これ見てください」
隆さんは近くの机へと近付くと、女子生徒達に的確な支持やアドバイスを投げかけていく。
その姿はまさしく部長であり、私と武道はお互い顔を見合せる。
「ちょっと待ってろよ、和泉にタケミっち。すぐできっから」
「部長ー、こっちも見てもらっていいですか?」
すぐにできるという言葉に首を傾げた。
何かを作っているのだろうかと思いながら、また武道を顔を見合せる。
「すぐにできるって……なんか作ってるんスかね?そもそもオレと和泉ってなんで呼び出されたんだろ?」
「確かに……」
メールでは用事があるとだけしか伝えられなかった。
何かあるのかメールで聞いてみたけれど、『来れば分かる』とだけ。
何があったのだろうかと思いながら来てみたのだが……何があるのかさっぱり。
そう思っていれば、林先輩がとある言葉を投げかけてきた。
「特攻服(トップク)だよ」
「え?」
「特攻服……?」
「喜べよ。オマエらの特攻服、三ツ谷直々に仕立ててくれてんだぞ」
「……三ツ谷君がオレと和泉の……?」
「特攻服を……?」
「初期メンバー以来だよなぁ?三ツ谷」
ふと、隆さんの方を見れば黒い布を手にしてミシンで縫い始めていた。
その眼差しは優しいものであり、真剣そのものであって、初めて見るものだ。
「オレらにとっての一番の晴れ姿(フォーマル)は、特攻服だろ。オレなりの感謝の気持ちだよ、和泉、タケミっち。8・3抗争ではドラケンを救ってくれたり、加勢してくれたり。“血のハロウィン”ではみんなの目を覚ましてくれた。だから、オマエらの特攻服は絶ッ対ェオレが仕立てたかったんだ」
「三ツ谷先輩……ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「バーカ。オレが勝手にやってる事だ」
それでもお礼が言いたかった。
大したことはしていないのに、特攻服を作ってくれるなんて……。