The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
まるでお母さんみたいなことを言うな。
俺はそう思いながらも、自分とこの母親とは大違いだなと三ツ谷先輩の背中を見ていた。
すると制服のズボンを何回か引っ張られて、そちらの方を向いてみれば妹ちゃん2人の姿。
2人の瞳は何処かワクワクしている。
「和泉お兄ちゃん遊んで!」
「遊んで!!」
「え、あ…」
「和泉、遊んでやってくれねぇか?」
「…分かりました。じゃあ何して遊ぶ?えっと…」
確か三ツ谷先輩が『ルナマナ』と呼んでいたことを思い出した。
お姉ちゃんの方がマナちゃんで、妹ちゃんの方がルナちゃんだったよなと確認してから2人の顔を見る。
「ルナちゃん、マナちゃん。何して遊ぶ?」
「おままごと!」
「お、おままこど…」
おままごとなんてそんなした事ないぞ。
したのは……幼馴染とも呼べる存在でもうずっと会っていない、ある少女と幼少期に遊んでいた時ぐらいだ。
どうやってしてたっけ。
そう考えながらも、ルナマナちゃんに『ここに座って』と言われたので座っていればおままごとのセット?みたいなのを持ってきた。
「ルナがお母さん!マナがお姉ちゃんで、和泉お兄ちゃんがお兄さん役!」
「お兄さん役ね…」
「ルナ、お母さんだからご飯作ってるから!お兄ちゃんとお姉ちゃんはお勉強!」
配役を決められて、動きも決められて勉強をするフリをしながら遊びに付き合う。
おままごとをしていれば、たまに三ツ谷先輩がこちらを見ていて笑みを浮かべていた。
(お兄ちゃんていうより、お母さんって感じだな)
なんて思っていれば、家の中で包丁が動く音が聞こえる。
『トントン』という一定のリズムの包丁の音に、お湯が湧く音。
俺の家では全く聞かない音。
そしてふわりと香る料理の匂いもそんなに嗅ぐ事もなければ、家に広がる事は無い。
(なんか不思議な気分だな…。不思議だけど、何故か落ち着く音と匂いだ)
そう思うのはおばさんと鳴海ねぇと、もう1人のイトコと暮らしていた時に聞いて感じたものだからなのか。
俺は不思議な懐かしく落ち着く感覚になりながら、ルナマナちゃんのおままごとに付き合った。
「よし。もう出来るから、手ぇ洗ってこいよー。ルナマナは和泉を洗面所に連れていけよ」
「「はーい!」」
「お兄ちゃん、行こう」
「うん」