The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
軽く脅してみる。
すると武道は『ギャー』と言いながら、顔を左右に勢いよく動かしていた。
そして眉間に皺を寄せていく。
「言ったら…お前、絶対引くし信じない」
「あ?言う前にそんな決めつけるなよ」
「だって……」
「……言わないと分からないだろ?それにお前の言葉なら信じるけどな」
アスファルトの上で胡座をかきながらそう言うと、武道の青空を詰め込んだような碧眼が揺れた。
また泣きそうで涙がゆっくりと溜まっていき、今にも決壊してしまいそう。
そしてコイツの今の表情は何かを抱えている。
しかもそれだけじゃなくて、思い詰めているような顔もしているので首を捻った。
「信じるか?本当に」
「何度も言わせるな。お前の言葉なら信じる……赤ん坊の時からの幼馴染だろ?」
「和泉……」
グッ……と武道は眉間に皺を寄せる。
何かを迷って悩んでいるようだけど、多分何かを言うとしているのだろう。
「あのさ……和泉は、タイムリープって知ってる?」
「タイムリープってあれだろ?自分自身の意識だけが時空を移動して、過去とか未来の自分の身体に移るんだったよな。小説とかでそういう設定、読んだ事がある」
非現実的な話。
自分の意識だけが飛ぶなんて実際無いし、それがあれば嫌な過去とか変えれるのだから便利だよな…と考えた事はある。
だけどそれは現実では起きない。
そう思いながら武道を見ると、真剣な目をしており唇を強く噛み締めていた。
何処か大人の雰囲気もあり目を数度瞬きさせる。
「……その、タイムリープがどうしたんだ?」
「もし、もしだぞ。オレがそのタイムリープをしてるって言ったら、信じる?」
ゴクリと武道の喉がなる。
そして俺は大きく目を見開かせながら『冗談だろ?』と言いかけたが、その言葉は喉に押し込んだ。
だって武道の目はとんでもなく真剣なのだから。
「信じる」
「え!?信じるの!?」
「は?お前信じてほしくないの??」
「いや!信じてほしいけど……いや、お前非現実的な考えはしないじゃん!」
「お前の目、凄い真剣じゃん。それにお前は下らない嘘とかは言わないし……」
信じてほしそうな目をしていた。
だから俺はお前の言葉を信じようと思えたし、幼馴染の言葉を信じてやりたい。
「で?お前、タイムリープしてんの?」