第1章 泣き虫ヒーロー誕生

「武道……？」

「ごめっ、ごめんっ！！！和泉ごめんなぁぁっ！うぁあああっ！！」

「……たけ、みち」


俺に抱き着いたままワンワンと泣き出す武道。
彼は泣き虫だ……泣き虫なのは知っているが、突然こんな風に泣くのはそんな見た事がない。

それに何故か俺への謝罪を口にしながらであり、戸惑いながらもその背中を摩る。
嗚咽と鼻をすする音に眉間に皺を寄せた。


「武道、どうした？何かあったのか？」

「うっ、うぅっぐ……ごめんっ」

「どうした？何に謝ってんだよ」

「ひっ……うっぅ」


ただただ泣き続ける武道。
これは落ち着くまで時間がかかりそうだな……と考えながらも背中をさする手は止めなかった。
暫くすると抱き着いていた武道の体がゆっくりと離れていく。


「ごめんっ…ぐずっ」

「おー…。んで？どうした、怪我だらけだし大泣き……何があった？」

「……怪我が痛くて泣いた！ごめん、じゃあな！」

「ちょっと待て。それだけで済むと思ってんのか？泣きながら俺に謝っていた説明をしろよ？あ？？」

「ヒェッ……」


逃げようとする武道の肩をガッシリと掴みながら、ニッコリと笑みを浮かべてみる。
すると武道の顔はみるみると真っ青になっていくが、ふと違和感を感じた。


(なんだ？なんか、武道なんだけど武道じゃない？？)


そんな変な違和感。
なんだろうと思いながら武道の顔を覗いてみれば、涙が溜まっていて碧眼が揺れている。


「お前さ…本当に武道か？」

「え？」

「……なんか、武道だけど武道じゃないみたいな気がする。というかさっきから様子が変だし…お前、何隠してる？」


何かを隠しているのは明らかだ。
だから俺が『どうした？』と聞いたらこうして逃げようとするし、変な違和感がする。


「オレはオレ……だけど」

「ふーん。じゃあなんでさっき泣きながら俺に謝ってきた？何かなれければおかしいだろう」

「……鋭っ」

「武道、何を隠してる？」


武道の目が大きく見開く。
そしてキョロキョロとまるで逃げ道を探すかのように目が動いており、戸惑った表情もしている。

コイツ本当に何を隠している？
そして何であんな急に泣き出したのか……とまた色々考えながらも逃げないように肩は未だに鷲掴み。


「言えない」

「……ほー？じゃあ、言えるようにしようか」

「怖い！」