The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
柚葉の表情は暗い。
家族に呼ばれたと言っているのに、嫌そうな表情はまるで和泉が本家の親族に呼び出された時の表情に似ている。
「大丈夫なのか」
「大丈夫だよ、タカちゃん。それじゃあね。和泉もまた」
「和泉、また遊ぼう。じゃあね」
「あ、ああ」
暗い表情をしたままの2人は、和泉達に別れを告げると歩き出して行った。
そんな彼らの後ろ姿を見送った和泉は疑問を抱きながら、三ツ谷の方へと視線を送る。
「2人の様子、おかしかったですけど…何かあるんですか?」
「アイツらの兄貴がいるんだけどよ…暴力的なんだよ。アイツらに手を挙げて…胸糞が悪い奴なんだ」
「家庭内暴力…ですか」
「ああ」
ふと、和泉はある事を思い出した。
そういえば10代目黒龍のボスが八戒と柚葉の苗字と同じだと。
『柴』という苗字はあまり聞かないし、もしかして…と思っていれば、右手を握られる感覚を感じた。
ちらりと右手の方を見る。
右手は三ツ谷の手で握られていて、その力はとても弱く優しいものであった。
「…デート、する?」
「え」
「さっきも言ったろ?その服装の和泉とデートしてぇって。どこ行きたい?」
「え、あ…」
そういえば、デートしようと話していた。
何処に行きたいかと聞かれて思い浮かぶ場所は無かったが、ある事を思い出す。
今日は幼なじみであるエマの誕生日だ。
誕生日プレゼントを買いに行こうと思っていた事を思い出して、三ツ谷を真っ直ぐに見る。
「あの、今日エマの誕生日なんです」
「ああ、そういえばそうだったな」
「エマの誕生日プレゼント買いに行きたくて…良いでしょうか?」
「ん、良いぜ。買いに行こっか」
反対もせず、笑顔で受け入れてくれる三ツ谷に和泉は嬉しくなった。
デートと言うのに、誕生日プレゼントを買いに行きたいと言ってしまったのに三ツ谷は嫌な顔一つせずに頷いてくれる。
自分はなんて素敵な人を恋人に持ったのだろうかと和泉は思わず口角が上がってしまう。
「じゃあ、向こうのデパート行ってみる?あそこなら色々あるだろ?」
「はい……てっ、あの……」
「ん?」
「て、手が……」
手が繋がれたまま。
和泉はその事に顔を赤くさせてしまう。