The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「買う?それ」
「そうしようと思います…折角だし、もう自由になれるから…」
和泉は小さく微笑みながら一度脱いでから会計しようかと思い、試着室に入ろうとしたがそれを柚葉が止めた。
「折角なんだから着たままにしなよ」
「え?」
「それで三ツ谷とデートしてきなよ」
柚葉の発した言葉に和泉は顔を真っ赤に染めた。
そして柚葉の言葉がバッチリと聞いていた三ツ谷は口角を上げてから、和泉の手を握る。
つい最近起きた血のハロウィンの時に殴り合いをしたせいなのか、まだ若干赤くなっている手。
だが自分より小さくて白い手を握った。
「折角だから、オレもその姿の和泉とデートしてぇな。駄目?」
「……だ、ダメじゃないです」
「よし!」
和泉はふと思った。
自分は三ツ谷からのお願いに弱いのかもしれないと。
そう思いながら、ワンピースを購入してタグを店員に切ってもらった。
最初に着ていた服は店員の好意により、店の袋を貰ったのでそちらへと詰める。
「じゃあ、次どこに行こっか!」
「おい、柚葉。お前、デートすればいいって言っておきながら一緒に出かけるつもりかよ」
「だってアタシ、折角和泉と知り合えたからもう少し一緒にいたいんだよ。なに、三ツ谷。束縛するつもり?」
「束縛じゃねぇけど?」
「…柚葉と隆さんって、仲良いんだな」
「ん?まぁ、付き合いは長い方だしね」
「ふぅん…」
和泉は少し面白くなさそうな表情を浮かべた。
別に三ツ谷が異性と仲良くしているのが嫌だという訳じゃないが、柚葉とは特別仲が良さそうに見えてモヤモヤとしてしまうのだ。
それが嫉妬だということを、彼女はいつ気付くのかは分からないが…。
そんな時であった。
ピルルという機械音が聞こえてきて、柚葉がポケットをまさぐっていた。
どうやら柚葉の携帯が鳴ったらしい。
「電話?」
「いや、メール。誰からだ…?」
そう言った柚葉の表情が一気に曇った。
「柚葉?」
「八戒、兄貴が呼んでる」
柚葉の言葉に八戒の表情も曇った。
そんな二人を見て、三ツ谷の表情が険しくなっているのに気がついた和泉は眉を寄せる。
「悪い、三ツ谷、和泉。アタシ達、家に帰らなきゃ」