The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
八戒は心配というよりも不安そうであった。
「あ?なんでだよ」
「女の格好の和泉とちゃんと話せるか不安で」
「髪下ろしてた時は話せてたじゃねぇか」
「髪を下ろしてただけだからね?でもさ、今回は違うじゃん」
確かにと三ツ谷は小さく頷く。
八戒が前に見た『女』の和泉は髪を下ろしてただけだ。
女の格好をしていた訳じゃないから…と思っていれば、試着室のカーテンが揺れた。
「あ、着替えれた?」
「あー、うん。着替えれたけど…似合ってるかどうか、わかんねぇ…」
癖なのか、男言葉が出ている和泉に三ツ谷は小さく笑いながら、なかなか出てこない彼女の元へと歩み寄る。
「出てこいよ、和泉。お前の可愛い姿、見たい」
「か、可愛いかは分からないですけど」
「可愛いよ。ほら、カーテン開けるぞ」
「あ、ちょっ!自分で開けるんで!」
なかなか出てこないのでカーテンを開けてやろうかと思えば、慌ててカーテンを掴まれてしまう。
そんな彼女にクスクス笑っていれば、中から恨めしそうな唸り声が聞こえてくる。
暫くしてから、おずおずと言わん形でカーテンが開いた。
「ど、どうでしょうか…」
中から、ワンピースを揺らして、短いウィッグも外した和泉が出てきた。
その姿はちゃんと『女の子』であり、薄紫のエンパイアワンピースがよく映えている。
「すっごい似合ってる!可愛いじゃん、和泉!な、八戒」
「そ、ソウダネ…て、タカちゃんすごいニヤけてる…さっきよりも」
「そりゃ、当たり前だろ。彼女がこんなにも可愛い姿で出てきたんだぜ?ニヤケない男がいないわけないだろ」
当たり前のように三ツ谷が『可愛い』と告げれば、和泉の顔が一気に赤に染まった。
そして顔を俯かせてしまい、そんな彼女にクスクス笑いながら小さな手を取る。
「すげぇ似合ってる。可愛いよ、和泉」
「あ、ありがとう…ございます…」
「うわぁ、三ツ谷の甘い顔初めて見たわ。和泉、それ買えば?すごい似合ってるし」
「あ、うん…そうだなぁ、買うかな」
和泉は自分の姿を改めて鏡で見る。
鏡に映る自分は正真正銘『女』であり、少し違和感を感じてしまう。
初めて身につけるワンピースに居心地の悪さを感じるけど、嫌いではなかった。