The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
ー2週間後ー
私と武道、そして龍宮寺先輩は3人で『東京少年鑑別所』に訪れていた。
その目的は羽宮先輩と面会する為だ。
「『懲役10年は覚悟しろ』って言われたよ。短いくらいだよな…」
そう呟いた羽宮先輩の目には狂気は感じられない。
年相応に見えるし、今目の前にいる彼が本来の姿なのかもしれないと思う。
「もう逃げねぇ、向き合わないといけない。アイツが、そう教えてくれた。…だから、今度こそちゃんと更生するつもりだ」
「……死ぬなよ、一虎」
「え?」
龍宮寺先輩の放った言葉に、羽宮先輩は驚いた表情を浮かべていた。
ここに来る前に龍宮寺先輩が言っていたのだ…羽宮先輩は『自殺して罪を償おうとするかもしれない』と。
そんなこと許すわけがない。
死んで償おうとするなんて、そんなことはけーすけくんは望んでいないはすだから。
「なんで…」
「テメェの考えてる事なんてわかってんだよ。自殺して詫びようなんて許さねぇかんな!?」
羽宮先輩は自分がしようとしたことを阻止されて、黙りとしてしまった。
「………でも……他に、どうしたらいいか…わかんねぇんだよ…」
「マイキーからの伝言だ」
「え?」
「“これからも一虎(おまえ)は東卍の一員だ。オマエを許す”」
それだけを伝えると龍宮寺先輩は椅子から立ち上がり、武道も私も立ち上がった。
そして部屋を立ち去ろうとした時である。
「和泉、ごめん」
謝罪の言葉が聞こえ振り向く。
彼の瞳には涙が浮かんでいて、泣き顔は彼を幼く見せる。
「怪我、ごめん…場地のことも」
「もう、いいですよ。その代わり…出てきたら、俺の知らないけーすけくんの話を聞かせてくださいね。羽宮先輩」
小さく笑えば、羽宮先輩は涙を流しながら頷いたのであった。
鑑別所を出ると、肌を刺すような冷たい風が吹いていた。
もう季節は冬へと向かっていて、寒さが嫌いな私は眉を寄せながら手を擦る。
「冷えるな」
「もう冬ですね」
「ついこの間までは涼しいって思ってたのに、あっという間ですね」
ふーと手に息を吐いてから温めていれば、前を歩いていた龍宮寺先輩が足を止める。
「そうだ!」
「どうかしたんですか?龍宮寺先輩」
「オマエらにもマイキーから伝言を預かってるんだ。タケミっち、イズミっち」
「え!?」
「佐野先輩から…?」