The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
けーすけ君との約束、そして隆さんの隣で『普通の女の子』として過ごしたいという気持ち。
それが私の中で大きくなっていて、今こうして初めて両親に逆らった。
「いいですよね…私が、女として生きていって」
「…好きにしろ」
吐き捨てるように呟いた言葉。
その時、携帯の録画が終了した音が響いた。
「言質は取ったぞ!勝昭!!確かに聞いたな!?佐野君、龍宮寺君、武道、三ツ谷君!由香!」
「聞いたぜ!おい和泉の親父さん!これで和泉が女として生きても文句は言わせねぇからな!」
わっ…とおじさん達が盛り上がる。
私は安堵の息を吐き出しながら、隣にいた隆さんと顔を見合わせてから微笑み合う。
私はこれで、女として生きても文句な言われない。
親族たちにあれこれ言われるかもしれないけど、当主である父さんが認めたのだからもう関係ないのだ。
「…これで、自分らしく生きていける」
作戦が成功してから、あらゆる約束事が決められた。
まず、私にもう手を挙げたりという虐待行為が行われない為に祐介おじさんと由香おばさんが本家に移り住むことになったのだ。
そして、私は中学卒業するまで学校では男装すること。
さすがにいきなり女の姿にはなれないし、色々周りに男装していた『言い訳』する為にも女の姿で生きるのは高校生になってからとなった。
まぁ、そこは妥協した。
「あーあ。でもイズミっちの女の姿でいられるようになるのは高校生からかぁ」
「でも、普段の生活で女の姿になっても文句は言われなくなりますよ。…ありがとうございました、協力してくれて。祐介おじさんとおばさんも…」
「いいってことだ。可愛い親戚が頑張ろうとしていたんだ、協力ぐらいいくらでもしてやる」
色々落ち着いたら、おばさん…由良おばさんと鳴ねぇに報告しにいこう。
秋にぃにも手紙を書いて伝えようと思っている時、じわりと傷んでいた頬に隆さんが優しく触れた。
「頬、大丈夫か?赤くなってる…」
「あ…このぐらい平気ですよ。慣れてますから」
「慣れちゃ駄目だ。前にも言ったと思うだけどな、オレ」
「三ツ谷君の言う通りだ、和泉。慣れちゃ駄目だから」
「分かってるよ、武道」
だけどこれで私は私らしく生きていける。
その喜びを噛み締めながら、微笑むのであった。