The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
嬉しげに微笑む三ツ谷は、和泉の手を取ると自室である部屋へと向かう。
そして仕切りであるカーテンを開けば、まず最初に和泉の視界に飛び込んだのはスケッチブックと珍しく散らかった机。
「2日前から少し散らかしちまってんだよ」
「三ツ谷先輩が珍しいですね……散らかすなんて」
「…和泉に着て欲しい服のイメージイラスト描いてたんだ」
「俺に…着て欲しい……?」
キョトンとする和泉に苦笑した三ツ谷は、敷いたままの敷布団の上に胡座をかくと布団を叩いて隣に座るように促す。
それを見た和泉は未だにキョトンとした顔のまま、三ツ谷の隣に座った。
三ツ谷は隣に座ったことに満足そうに微笑みを浮かべると、和泉の頬に触れた。
何時ものように壊れ物に触れるかのように優しく、そっと触れる。
「和泉の誕生日に、オレが作った服を贈りてぇんだ」
「……誕生日に、ですか…?」
「そ。12月25日に、誕生日プレゼント…」
「覚えてたんですか…?誕生日」
「当たり前だろ」
三ツ谷に誕生日を教えた…というよりも、初めて三ツ谷の前で誕生日を口にしたのは場地の葬式の後。
あのチャームブレスレットの件の時に、1回だけ言ったきりである。
「場地がお前に贈ったチャームブレスレットと合う服を作って贈りたいんだ」
「え……い、いいんですか…?」
「逆に俺が聞きてぇよ。作っても良いか?」
「全然っ、構いませんよ」
「じゃあ、オレの我儘も加えていい?」
「我儘…まま?」
「ワンピース。ワンピースを作って贈りたい」
ワンピースという言葉に和泉は少しだけ目を見開かせていた。
何せワンピースは女性物の服であり、三ツ谷がそれを作って贈りたいと言うなんて思っていなかったから。
「外に着て出て欲しいという訳じゃねぇんだ。家の中、オレの前だけでいい。ただ…オレだけ、女である和泉も見てみたいって思ったんだ。男であるお前も、女であるお前も全部見たい。独占欲つーか…そういう感じ」
「……良いですよ」
「え!?マジ!?」
「はい」
まさか『良いですよ』と言われると思っていなかったのか、三ツ谷は驚いていた。
そんな彼に和泉は穏やかな笑みを浮かべながら、彼が手にしていたスケッチブックを覗く。