The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「ごめんタケミっち、イズミっち。殴ったり蹴ったり…色々と本当にごめん」
「マイキー君…」
深く頭を下げる佐野先輩に何とも言えなかった。
あの時殴ってしまったが、俺だって武道に何かあれば相手を殺すかもしれない。
それを分かっているから何も言えなかった。
「マイキー君、頭を上げてください。オレ全然気にしてないっスよ」
「タケミっち……」
「それとオレもすみません。ナマ言って…」
「…タケミっちが謝る事ないじゃん」
そんな会話を聞いていれば、佐野先輩の視線が俺へと移り申し訳なさそうな顔をしていた。
だがその顔をするのは俺の方でもあり、未だに止まらない涙を何とか止めようと何度も擦る。
「ごめんイズミっち…」
「いえ…俺こそ、殴ってすみませんでした…」
そこから沈黙が流れていれば、遠くから騒々しい音が聞こえてきた。
救急車とパトカーのサイレンや無線機の音…色んな音が聞こえてくるのはあの廃車場。
そして脳裏に浮かぶのはけーすけくんの顔。
彼の顔を思い出した瞬間またボロッと涙が零れてしまい、執拗い涙を拭うために乱雑に手の甲で拭っていればその手を掴まれて止められた。
「……え」
「タケミっち。悪ぃけど、和泉連れて行って良い?」
「……はい。宜しくお願いします」
「悪ぃな」
「え?三ツ谷先輩…?」
手を取ってきたのは三ツ谷先輩。
その目は悲しそうで、手を振り払おうなんて思えなくて口を閉ざした。
そして三ツ谷先輩は佐野先輩の方を振り返る。
「悪ぃ、マイキー。オレと和泉はここで帰らせてもらうな」
「……ああ、じゃあな。気を付けて帰れよ」
「おう」
そして三ツ谷先輩はオレの手を引いたまま歩き出し、道中は2人して無言。
だってなんて声をかければ分からなくて、ただ無言のままでありその間に涙は自然と止まっていた。
暫くすれば三ツ谷先輩が住んでいるアパートに辿り着き、やっぱり無言のままで鍵を開けると引っ張られるように中に入れられた。
そして居間に着いたと思えば三ツ谷先輩その場で抱き締められる。
「みつ…や、せんぱい……?」
「思いっきり泣いてもいい」
「え……」
「ずっと押し殺すように泣いてただろ?だから、今はオレしかいないから思いっきり泣いていい。泣いていいから……和泉」