The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
佐野先輩は羽宮一虎……羽宮先輩に背を向けて歩き出した。
そして龍宮寺先輩はそんな2人を見ていたが、直ぐに東卍メンバーへと振り返り指示を出す。
「東卍もここで解散だ!」
「ウッス!」
副総長の指示で慌てたように東卍メンバーは帰っていく。
このままこの場所に居れば警察に捕まってしまうから、みんな慌てたように帰っていくのだ。
だが俺は動けなかった。
目の前にいるけーすけくんの傍から離れたくなくて、ずっと手を握り締めていれば羽宮先輩が佐野先輩に声を掛けていた。
「マイキー…」
俯いていた羽宮先輩は顔を真っ直ぐに上げていた。
表情は見えないけど、きっともうあの狂気的な目はしていないのだろう。
「許してくれなんて言えねぇ。真一郎君の事も場地の事も一生背負って生きていく」
羽宮先輩は頭を佐野先輩へと下げていた。
だが佐野先輩は振り返ることはなく、ゆっくりと歩き出していく。
そして羽宮先輩はこちらにやって来てから、俺の目の前に座ると頭を下げた。
「ごめん…和泉。あの時オマエを襲って…そして大事な幼馴染の場地を奪っちまって」
「羽宮…先輩……」
「ホント…ごめんな」
言葉が出なかった。
なんて言えば良いのか分からなくて、けーすけくんの顔を見てから手をまた強く握る。
すると肩を叩かれて振り向けば武道が立っていて、俺へと手を差し出していた。
「……帰ろう」
「…………うん」
差し出された手を取れば、武道は優しく握ってくれて俺を連れていくように歩き出した。
そういえば昔よく泣いてた時は2人で手を繋いでいた…慰める方法が分からなくて、でも人の体温を感じると落ち着くからって。
出口に差し掛かる前に振り向けば、羽宮先輩は背中を向けてけーすけくんの隣に座っていた。
そしてその背中を見てからまた歩き出す。
「和泉…目、擦っちゃダメだ…」
「うんっ……」
「痛くなる…」
「んっ……」
「ごめんっ……場地君、守れなくてっ…」
帰り道、武道はずっと俺の手を握ってくれていた。
そして声を掛けてくれるが、俺は小さく返事しか出来なく溢れる涙をただただ擦って拭う。
「武道のせい…じゃないっ……」
そう言いながら涙をまた手で拭っていれば、前を歩いていた佐野先輩が振り向いた。
悲しそうな顔をしながらこちらに歩いてくる。