The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
お願いだから俺を置いていかないで。
これ以上大切な人が居なくなるなんて、耐えられない…苦しくて辛い。
もう誰かを見送るのは看取るのは嫌だ。
「お願いだからっ……置いて、行かないでっ…」
「ごめんな……。それに高校、一緒に行こうなって約束守れなくて」
「っ……やだ、やだだよ…」
「泣き虫、治ったと思ってたけど…やっぱ治ってねぇなぁ…」
困ったように言いながら笑うけーすけくんは、俺の手を取ると優しく握った。
その手にはもう温かさなんてなくて…ほんのり冷たくなっていて青白い。
鳴ねぇの時と同じ。
暖かった手がゆっくりと冷たくなっている…もう体験したくないと思っていたのに…。
「和泉、頼みがあるんだ…」
「頼み…?」
「お前にも、東卍とマイキーを頼んだ……。そして、千冬を頼むぜ。マイキーとコイツのストッパーになってくれ……な?」
狡い…けーすけくんは狡い。
そんな言い方されたら、こんな時にお願いされたら断ることなんで出来ないのに。
本当に狡い。
「分かった……分かったから。お願いだから……死なないでよっ…。自分らしく、偽らないで生きるからっ。佐野先輩達のストッパーになるから……っ」
「ごめんなぁ…」
顔を俯かせて泣いていれば、けーすけくんは手を握る。
小さい頃は俺が泣いてると慌てていたクセに…そう思いながら声を押し殺して泣いた。
止めどなく溢れる涙を自分では抑えれない。
そして声を押し殺しても、僅かに嗚咽が漏れてしまい唇を噛み締めた。
「……千冬ぅ」
「ハイ」
「ペヤング食いてぇな」
「……買ってきますよ」
「半分コ、な?」
そう言うとけーすけくんは満面の笑みを浮かべた。
嬉しそうに笑っていたが、だんだんと俺の手を握っていた手からは力が抜けていき離れそうになったのを握り締める。
「ありがとうな、千冬…」
「……………場地さん…?」
「っ……けーすけくんっ…」
笑顔が消えて青白くなった顔。
もう握ってくれない手と、消えてしまった大好きな温もりと優しい力。
全てがもう消え去っていた。
「……嘘だ……場地さぁぁん!!!あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"!!!!」
千冬の叫び声が廃車場に響き渡る。
そしてそれと同時に佐野先輩がとんでもない力で羽宮一虎を殴り飛ばす。
その目は何処までも真っ黒になっていた。