The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
やっぱりダメだ。
止めなきゃ、安静にさせなきゃ下手すれば……そう思いながらその先は考えたくなかった。
慌てて廃車の山を降りていけばけーすけくんは倒れている羽宮一虎を見て微笑む。
「一虎」
優しく呼びかける声。
だがけーすけくんの手にはナイフが握られていた。
そのナイフを見た瞬間嫌な予感がして、急いで降りてから駆け寄ろうとした時だ。
「オレは…」
「けーすけくんっ!!」
大きく両手を振りかぶってから、けーすけくんは手にしていたナイフを自分の腹部に刺した。
躊躇無く勢いよく突き刺し、深く刺し込むように手を動かしていた。
「一虎(オマエ)には殺られねぇ」
「場地さぁん!!!」
その場にいた全員が目を見開かせ、けーすけくんを見ていた。
そしてけーすけくんはゆっくりとその場に倒れていき、地面がみるみると血で真っ赤に染まっていく。
慌ててけーすけくんに駆け寄れば、千冬がけーすけくんを抱き上げていた。
口から血を流し青白い顔をしたけーすけくんはぴくりとも動かない。
「けーすけくんっ、けーすけくん!!」
「場地さんっ、なんで…っ!?」
「けーすけくん………やだ、やだ…血が、血が…」
血が止まらない。
全然止まらなくて、ただただ流れていくだけで傷口の腹部を抑えてもさっきと同じように指の間から血が溢れ出して行く。
すると視界の端で羽宮一虎がゆっくりと起き上がるのが見えた。
そして目からは涙が流れているのも見える。
「……マイキー、次はテメーだ。仲良く逝かせてやるよ」
「黙れ。殴り殺してやる」
「………場地君…。………なんでなんだよ?わかんねぇよ…」
ゆっくりと近付いてきた武道の声は震えていた。
目には涙がゆっくりと溜まりだし、揺れる瞳はけーすけくんを映し出している。
「何の為に…自分で自分を刺したりなんか…!?」
「タケミチ…もっと近くに」
荒い息をしながらけーすけくんは武道を呼んだ。
肌はどんどん青白くなり、口からは微かに血が流れていて腹部の血もやはり止まらない。
その事に手が震えて涙が止まらずにいれば、横に武道がしゃがんだ。
「稀咲は敵だ」
「っ!!」
「それに気付いたのはパーが長内を刺した事件。“パーをしゅっしょされる代わりに参番隊 隊長に任命してくれ”。稀咲がマイキーにそう持ち掛けるのを偶然見ちまった」