The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「マイキー…」
「マイキーが一虎を……殺しちまう!!もう誰もマイキーを止めれねぇ」
佐野先輩が羽宮一虎を殴る音だけが響いてくる。
そして音が聞こえてくる度に、手に生ぬるい血が広がる度に涙がボロボロと落ちていく。
こんな時に何をすれば良いのか分からない自分が、心底憎い。
「泣き虫なのはっ…なおって、ねぇんだなぁ……」
「え……」
「泣き虫、和泉……」
「け、すけ…くん」
ゆっくりとけーすけくんが立ち上がる。
その光景に目を見開かせていれば、けーすけくんは苦笑いを浮かべた。
そして視線は羽宮一虎を殴り続けている佐野先輩へと向く。
「マイキー」
「場地…さん…」
「マイキィィ!!」
大声で佐野先輩を呼んだけーすけくんは、2度咳き込むと大量の血を吐き出した。
そして佐野先輩は驚いたような顔をしてから振り向いてから、けーすけくんをその目に写す。
ふらつきながら歩き出そうとするけーすけくんに、思わず立ち上がるとその腕を引っ張った。
この怪我でその出血量で動けば傷が悪化してしまう。
「ダメ……」
「大丈夫…だ。和泉」
「だめっ、だめ……!」
行っちゃダメと引き止めながら涙を流せば、けーすけくんは困ったように笑った。
そして優しく頭を撫でてから佐野先輩を見ると、笑顔を浮かべる。
「オレの為に…怒ってくれて…ありがとうな」
「場地君っ!!?」
「動いちゃダメだ場地さん!!!」
「けーすけくんだめっ!!血が!!血がそんだけで出てるのに動いたらっ!!」
千冬と共に引き留めようとするが、けーすけくんは困ったように笑うだけ。
そしてけーすけくんは腕を掴んでいる俺の手をやんわりと包み込んだ。
「悪ぃな、和泉。約束、守れねぇわ」
「…………え」
「ごめんな、和泉」
そう言うとけーすけくんは優しく俺の手を腕から離させてから歩き出す。
廃車の山を降りていき歩く度に血がボタボタと落ちて、地面が真っ赤に染められていく。
ゆっくりとゆっくりと歩き出すけーすけくんに、周りの人間は目を見開かせていた。
だってあれだけ血を流しているのに、動くから…歩くから。
「場地…」
「血が…」
「オレは死なねーよ。こんな傷じゃあ、オレは死なねー!!!」
「けーすけくんっ!!」