The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
ブツブツと何を呟いているが聞こえない。
虚ろとした目をしており、その目は今まで何度も見た事があった。
夜の街の裏路地で座り込んでいる奴ら、病んでいる奴らがしている目。
「やっぱやべぇ奴だな、一虎は!」
「え!?」
「そうか!場地を芭流覇羅に引き抜いたのは、こうやって寝首をかくためか!!」
「なに、いって……っ!?」
「ねぇ?総長」
何を白々しい事を言っているんだと思っていれば、稀咲の背後に佐野先輩が立っていた。
額から血を流しながら立っている佐野先輩の雰囲気が怖い。
「マ…マイキー君…」
「佐野先輩っ…」
「違う、一虎君は」
稀咲は佐野先輩を煽っている。
佐野先輩の中にある怒りに対して煽り、羽宮一虎を殺すように仕向けているのだ。
このままじゃ、武道が話してくれたあの最悪の未来になってしまう。
止めなければ。
そう思い立ち上がろうとしたが、けーすけくんから離れられなかった。
ここで止血しなければけーすけくんが危ない…そう思っていると佐野先輩がゆっくりとした口調で話し出す。
「殺したかった…。ずっと…一虎(テメー)な年少から出てきたら真っ先にオレが殺そうと思ってた。そんなオレを諭し続けてくれたのが場地だった」
「佐野先輩…」
「場地が言ってた。“一虎はマイキーを喜ばせたかった。だからあいつは受け入れられない。たとえマイキーの兄貴を殺しちまっても、自分を肯定する為にマイキーを敵にするしかなかった…”ってよー」
ヒュッと喉が鳴る。
佐野先輩がキレているのは一目瞭然だが、顔に環状全てが無いのだ。
ただ無の顔……目も真っ黒で闇しかなくてただ、ただ背筋が凍るような感覚しかない。
「マイキー」
佐野先輩はゆっくりと廃車の山から降りていき、龍宮寺先輩が目を見開かせながら息を飲んでから佐野先輩の渾名を呼んだ。
「ケンチン。喧嘩はもう終わりだ」
「は!?オイオイオイ!喧嘩は終わり!?ナメてんよかマイキー?そんなのテメーの決める事じゃねーだろーが!!」
喧嘩を終わりにしようとする佐野先輩の目の前に修二が立ちはだかった。
そしてニヤッと何時もの笑みを浮かべてるのを見ていたが、佐野先輩の纏う雰囲気に思わず叫んだ。
「修二!!!避けろ!!」
「あ?和泉?」
修二が俺の方を見てから名前を言った瞬間、佐野先輩の足が動く。