The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
稀咲を殺るというのはどういう事なのだろう。
だって芭流覇羅のアジトでは佐野先輩を殺すという羽宮一虎に手を貸すと言っていたのに。
そう思っていると武道が何かに困惑した顔をしているのに気が付いた。
「武道?」
「メチャクチャだ!!」
「え?」
「抗争が始まって、マイキー君がやられて…稀咲が助けて、場地君が稀咲襲って一虎君が場地君を刺した…メチャクチャた」
確かにそうだ。
この抗争はメチャクチャ過ぎる…何がどうなっているのか分からない。
だけど…だけどけーすけくんが死んでいないという事は、佐野先輩が羽宮一虎を殺す理由は無くなった筈。
「オレは東卍のトップになる為に稀咲を潰す!!」
「武道……」
「千冬!!」
「うん」
「オマエらも稀咲を?」
「一緒に戦わせてください!」
そう武道が叫んだ瞬間、けーすけくんは武道と千冬を殴り飛ばしていた。
拒むように、一緒に戦わせる気はないその殴りように眉間に皺を寄せる。
何故拒むのだろうか。
どうしてそこまで一人で稀咲を殺る事に拘るのだろうかと唇を噛み締めた。
「邪魔すんな」
「なんで…一人でやる必要ないじゃないですか!?」
武道の言葉にけーすけくんは酷く冷たい目を向けながら睨み、思わず武道は『うっ』と言葉を零す。
そして千冬はただけーすけくんを呼ぶが、彼は反応を示さずにこちらへと歩き出し武道の横を通りポツリと呟く。
「マイキーを頼む」
「けーすけくん…」
「和泉、オマエもマイキーを頼むぞ。それと……千冬の事も頼んだ」
「……なんで…なんで?」
思わず横を通り過ぎようとするけーすけくんの腕を掴んだ。
何故、急に武道と俺に佐野先輩を頼むと……千冬を頼むと言ったのか。
そう思い腕を掴む手に力を込めてからけーすけくんを見て、目を見開かせた。
けーすけくんは泣きそうな、辛そうな笑顔を浮かべていた。
そして片手を持ち上げると俺の頭に手を置いてから、数度優しく撫でてくる。
「ごめんな、和泉。約束守れねぇわ」
「……え」
「お前にまた辛い思いさせちまうな……」
「ど、いうこと……」
「ごめんな」
それだけを言うと、俺の手を離させてからけーすけくんは歩き出した。
そして俺はけーすけくんの言葉の意味を理解出来ずに、どういう事なのだろうと固まるだけ。