The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
ポロッと千冬の目から涙が零れた。
その涙は頬を伝っていき、ポロポロと落ちていて思わず目を見開かせる。
「オレは…場地さんを殴れねー」
「は!?」
「千冬!?」
「何言ってんだよ千冬…!!」
突然の千冬の言葉に驚いていれば、けーすけくんが右腕を上げたのが見えた。
そしてけーすけくんは遠慮無く肘を武道の頭を打ち付け、武道が白目を向いたのが見える。
「武道!」
この衝撃だと武道は意識を失う。
もしそうなれば、1人でけーすけくんを止めなければならないが…なんとかなるだろうか。
小さい頃は勝てていた。
だが今は背も体格も力も昔とは違うのだ…勝てるだろうかと思いながら抱き着く腕に力を込める。
「和泉!オレら2人で止めるぞ!!」
「武道!」
意識を失うかと思ったが武道はちゃんと意識があり、力を強く込めながら離そうとしていない。
それに驚いたせいなのか、武道の意識がある事にホッとして油断したせいなのかけーすけくんの左手が俺の胸ぐらを掴んでいたの気づかなかった。
「邪魔だ、和泉」
「やばっ!」
「和泉!!!」
胸ぐらを掴まれたと思った時には投げ飛ばされていて、廃車に背中を強く打ち付けていた。
かなりの痛みが背中に広がり眉間に皺がより、同時に咳き込む。
「ゲホッ!!!」
「和泉!……オレ1人でも守らないと!!」
咳き込みながら背中の痛みに顔を歪ませていれば、ふと武道が何かを思い出したような顔をした。
そしてポツリと呟く。
「あれ?場地君を殺すのって、稀咲じゃなくて一虎君じゃん」
「……羽宮一虎ッ!」
そうだ稀咲じゃない。
けーすけくんを殺すのは稀咲ではなく羽宮一虎ということを思い出し、佐野先輩の足元で倒れている筈の羽宮一虎を見よう視線を移せば羽宮一虎の姿がない。
「いない!?」
「なっ!」
姿の無いことに驚いていれば、視界に影が写り目を見開かせた。
視界に映ったのは羽宮一虎の背中であり、手にナイフが握られているのが見える。
「羽宮一虎っ!!!けーすけくん!!!!」
立ち上がり止めようと走ったが間に合わなかった。
オレが掴んでいたのは羽宮一虎の特攻服の上着であり、けーすけくんの背中にはナイフが刺さっている。
「え!?一虎君…!?」
「死ね……場地……」