The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
そう言いながら手を振り歩き出す。
暫く歩いてから振り向いて見れば、満面の笑みの橘が武道に話しかけていた。
話しかけられている武道の目は何処か悲しげ。
未来に橘はいないから、だから今の橘を見ると悲しいのだろう。
(東卍が犯罪組織にならなければ、武道のあの悲しい表情は無くなる。橘も生きている)
ならばやれる事はやらなければ。
東卍に入って、稀咲鉄太との接触を止めれば良い……実に簡単そうで難しそうな課題である。
「にしても、あれから考えても佐野先輩が犯罪組織の2トップになりそうな感じはなかったな……」
傍に一応?常識人そうな龍宮寺先輩もいるのだから、犯罪組織になる前に止めてそうだし。
いや龍宮寺先輩も稀咲と何かあって犯罪組織に……。
「分かんねぇな……」
グダグダと考えながら、帰り道とは違う道を選んで歩いていく。
目的の場所は家からまぁまぁ離れている、小さい頃に武道達と遊んでいた公園。
夕方でも人はそんなに居なくて静かな場所であり、俺はまぁまぁお気に入り。
そう考えていれば公園の近くに来て、ふと掲示板が視界に入った。
「花火、大会……?」
掲示板に貼られているチラシには『花火大会』という見出し。
どうやら今日あるようで、俺はそのチラシを見ながら思わず微笑む。
(武道と橘、見るかな?この花火)
そう思いながら公園に入り、日陰となっているベンチに腰をかけてスクールバッグから本を取り出した。
『経済力について』なんて可愛げのないタイトルの本だ。
「勉強しねぇと煩いしな……」
跡を継ぐ為の勉強をしなければならない。
俺はその為に可愛げのない本を読んだり、父の会社に行って傍について学ぶことがある。
因みにである。
跡を継ごうと思ったのは両親や親族に言われたからではない。
俺が『ある人』と家の跡を継ぐ事を約束したからだ。
(家を継ぐんだ……あの人との約束の為にも)
約束を叶える為にも俺は家業を継いで、神澤家の当主にならないといけない。
だから未来でなんかで死んでる場合じゃないのだ。
そう思っていた時である。
近くで恐らく小さい女の子達の泣き声と、悲鳴に近い叫び声が耳に届く。
「ん?」
「離してっ!!!」
「いやぁ!!」
「なんだ…?」
2つの叫び声に眉間の皺を寄せながら、腰をゆっくりと上げていく。