The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「けーすけくん…戻ろう」
「あ?」
「東京卍會に…佐野先輩は、けーすけくんに戻って欲しいんだよ。こっちに」
こう言ったって無駄なのは分かっている。
けーすけくんが『分かった』と頷かいのも知っている…それでも戻ってと願ってしまうのだ。
無理矢理ではなく自分の意思で戻ってきて欲しい。
だがけーすけくんは頷なかった。
俺の手を払い除けてから、眉間に深い皺を刻んでから睨み付けてくる。
今までそんな目を向けられたことはない…。
「戻らねぇって言ってるだけ。しつけぇな」
「なんで…」
「……オレは、やる事があんだよ」
「東京卍會から抜けないといけないわけ?そのやることは」
「ああ……」
そのやる事ってなんだ。
わざわざ東卍から抜けて、芭流覇羅に行かないとそれは出来ない事なのかと思いながらやっぱり無理矢理連れていくしかないのかと思った時である。
「マイキー!!!」
「…え?」
龍宮寺先輩の叫び声に振り返れば、廃車の山となっている所で佐野先輩が倒れていた。
頭からは血が流れており、倒れている佐野先輩の前には羽宮一虎と芭流覇羅のアジトにいた2人がいる。
そして羽宮一虎の手には血が付着している折れて形が歪になっている鉄パイプ。
直ぐにその鉄パイプで佐野先輩を殴ったのだと分かった瞬間、腹の奥底から怒りが溢れ返った。
「芭流覇羅(オレら)の勝ちだ」
「羽宮一虎っ……!」
「一虎…」
ボソッとけーすけくんの呟く声が聞こて振り返れば、そこにはもうけーすけくんの姿は無かった。
何処に行った!?と辺りを見渡すが姿はなく、もう1回佐野先輩の方を見れば立ち上がっている姿が見えた。
「1個だけ教えてくれ、一虎」
「あん?」
「オレはオマエの敵か?」
その言葉に羽宮一虎の動きがピタリと止まる。
何かを思い出しているような、何かを考えているような表情をしているが何を考えているかは分からない。
だが取り敢えず佐野先輩が動いているのは安心した。
「オレは…オマエのせいで苦しんだ。オマエのせいで年少にいたんだ」
「は?何言ってんだテメェ」
「敵に決まってんだろーが!!!」
羽宮一虎はゆっくりと佐野先輩に背中を向けると、廃車の山を登っていく。
ゆっくりとゆっくりと登っていきながら、静かな声で言葉を発していった。