The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「色々、急すぎるんですよ……」
「ごめんな?」
全く反省なんてしていない笑顔に和泉は何とも言えずに溜息をついた。
そしてじんわりと熱い肩に触れていれば、三ツ谷は『風呂、湯が溜まったか見てくるな』とその場を去る。
(あの人ほんと…意地の悪い……)
はぁぁぁぁと深く深く溜息を付く。
顔は肩以上に熱くなっているのは気付かないフリをしてから、戻ってきた三ツ谷に促されて浴室へと向かった。
「これ、傷どんな風に残るのかな……」
シャワーを浴びながら和泉は何となくそう考えた。
肩は火傷の跡のように残っているが、額に傷はどんな風に残るのだろうかと想像する。
「羽宮一虎……。俺もお前を殺したいよ」
お前が俺を殺したいように…真一郎君を殺したお前を。
彼女の瞳に静かに殺気が灯りだしたが、直ぐにその殺気は消えていった。
今、ここで殺意を芽生えさせても意味がないだろうと和泉は自分自身に言い聞かせながら…。
素早くシャワーを浴び終えた和泉は、三ツ谷が用意してくれていたスウェットを着てから居間へと向かえば三ツ谷が新しい包帯や傷薬を用意していた。
「温まった?」
「はい。お先にありがとうございました」
「ん。じゃあ、ここ座って。薬塗って包帯変えるから」
「はい、お願いします」
「包帯外すけど…痛かったら言えよ」
三ツ谷はそれは丁寧に薬を塗って包帯を巻いてやった。
傷に響けば痛いから……そう思いながら慎重にして綺麗に包帯を巻くと和泉は『おお…』と包帯を撫でる。
「やっぱり三ツ谷先輩って、手先器用ですよね。裁縫も上手ですし」
「まぁな。和泉も器用そうだけどな」
「俺はそこまで器用じゃないですよ…?バイク弄りとかは真一郎君に教えてもらったから出来るけど、裁縫は出来ませんし……指穴だらけになるもんだから…」
「穴だらけ…」
「穴だらけです」
頷きながら和泉は家庭科の授業を思い出す。
裁縫をする際に針で指を何度も何度も刺して、血だらけになって大騒ぎになったのを。
どうも和泉は裁縫が苦手なようだ。
「血だらけになって大騒ぎになって、武道は泣くし…」
「あははは…そりゃ、パニックになって泣くだろうなぁタケミっちは」
「泣き虫も困ったもんですけどねぇ」