The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
額にハンカチを当てればじわりと血が滲む。
それを見ていた武道の瞳には涙が更に溜まり始めて、またいつ決壊してもおかしくない状況。
そんな彼を見て和泉は苦笑した。
「大丈夫だから、そんなに泣くなよ」
「ごめん…和泉……ぐすっ」
「大丈夫だ…大丈夫だから泣くな」
幼子に聞かせるように言葉であやして、泣き止むように頭を撫でてやる。
だが武道は悔しかった……和泉が襲われると知っておいて、怪我をさせてしまったのだから。
怪我なんてさせたくなかった。
それに意識不明の重体じゃなくても、これが原因でマイキーは一虎を殺してしまうかもしれない。
「で、お前ら……誰の命令でイズミっちを襲った?」
「ひっ……」
「お、オレらは……」
「芭流覇羅だよな…お前ら」
「羽宮君に!!!羽宮君に言われたんだ!!神澤和泉を殺せって!!」
「……は?」
マイキーの声がとてつもなく冷たく、武道と和泉は背筋が凍ったような感覚を味わった。
冷や汗さえも冷たくてマイキーの目を見た瞬間武道の喉がヒュッと鳴る。
光なんてない何処までも深い闇のような瞳は恐怖でしかなかった。
(やばいな…確か佐野先輩、これも原因の一つで羽宮先輩殺すんだよな……やらかした。下手したら佐野先輩…この芭流覇羅の奴らも殺しそうだな。その前にコイツら逃がさないと)
もっと注意していれば良かった。
そう思いながら和泉はハンカチで傷跡を抑えながら立ち上がると、芭流覇羅メンバーの前に立つ。
「羽宮一虎に伝えろ。何か不満があるなら、姑息な手を使わずに正々堂々と殺しに来いって」
「和泉!?」
「さっさと行け。ここで死にたくなければ」
和泉の言葉に芭流覇羅メンバーは何度も頷いてから、まるで脱兎の如く逃げ出しながらもマイキーを見ていた。
早く逃げなければマイキーに殺されると思いながら…もう関わりたくないと思いながら。
「……イズミっちは優しいね。ここでアイツら殺しておけば良かったのに」
「無駄は殺生は嫌いですからね。それにここで面倒起こしたら嫌でしょ?抗争前に」
「にしても……なんで一虎、イズミっちを狙ったんだ?」
「……気に食わないんでしょうね。けーすけくんを連れ戻そうとする俺が」