The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
そしてふと真一郎君を思い出すとあの時の光景を思い出してしまう。
俺が10歳の時に飲酒運転したトラックが突っ込んできて、俺をそのトラックから庇って死んだ鳴海ねぇの葬式を。
葬式だけじゃない。
あの時泣き叫んでいた真一郎君までを思い出し、唇を強めに噛み締めた。
「にしても…まさか暴走族に入るかもしれないなんて…」
これを知ったら『アイツら』が五月蝿そう。
俺は深く溜息をついてから、家へと続く道をゆっくりと歩き出した。
(武道は恐らく東卍に入るだろうな…。その方が稀咲鉄太との接触を防ぎ易い。そして…俺は武道を守る為に入る)
そう考えながらネオンが煌めく街を歩いていく。
夜となれば水商売の見せやらホストやら、居酒屋等の活躍する時間となる。
あちこちにスーツ姿の男達がいれば、女の姿もあり歌舞伎町とあんまり変わらないな…と目を細める。
そして裏路地から帰ろうかと思った瞬間足を止めた。
(誰か…後をつけて来てるな)
微かに気配を感じる。
足音もずっと付けているようで、眉を少し寄せてから動きを止めていた足を動かす。
(撒くか……)
後をつけられるのは偶にある。
俺の家の地位や財産等に目がくらんで、チームに入るよう誘ってくる奴らとかがよくやってくるのだ。
「チッ……やっぱ付けて来てんな」
裏路地入って撒くか。
そう心で呟きを早歩きをして裏路地に入ろうとした瞬間である。
両脇に誰かが腕を入れてそのまま持ち上げられた。
「イヌピー、捕まえたぞー」
「……お前らか」
「和泉」
目を細めながら後ろを振り向けば、狐目の三白眼黒髪男と金髪に左目に火傷の痕を持つ男がいた。
三白眼の男は俺を持ち上げて、ニマニマと笑っているのが腹立つ。
「青宗…九井っ……」
三白眼の男の名前は九井一。
そしてもう人の火傷の痕を持つ男の名前は、乾青宗といい昔馴染みである。
この2人が厄介な相手なのだ。
1年前からコイツらが所属しているチームに入れ、入れと執拗い。
「また勧誘か…」
「ああ。和泉、『黒龍』に入ってくれ」
「断る」
「即答かよ」
「離せ。ムスコ蹴りあげて再起不能にすんぞ」
首を後ろに向けてから睨みつければ、九井は肩を竦めてから大人しく俺を地面に降ろした。
そして振り向けば2人は相変わらずの白の特攻服姿。