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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第1章 泣き虫ヒーロー誕生


和泉は微妙な返事をしながら、目元を少し引き攣らせていた。
急に『手に入れたくなった』と言われて、しかも顔が整っている男子から言われればときめく者はいるだろう。
だが和泉はときめくより引いていた。


「ねぇイズミっち。絶対オレのチームに入ってね」

「…武道が入るなら、佐野さんのチームに入りますよ」

「ふぅん…。なぁイズミっちさ、その『佐野さん』て辞めなよ。もうフツーの他人じゃないんだし」

「…じゃあ佐野先輩と龍宮寺先輩って、呼びますね」


特に親しい訳じゃない。
身内の亡くなった恋人の弟とその親友でしかない。
なんなら昨日あったばっかりの人間なのだから、名前で呼ぶつもりはなかった。

『先輩』という言葉もまだ何処か他人行儀。
マイキーは面白くないという顔をしているが、和泉は早くこの場を去りたいという顔。


「じゃあ、俺はこれで」

「バイバーイイズミっち」

「マイキーが悪かったな」

「いえ」


逃げるかのようにその場から去った和泉は、少しげんなりした顔で早歩きで歩いていた。
そして眉を寄せながら呟く。


「佐野万次郎…ヤバい奴だわ……」


やっぱり真一郎とは似ていない。
似ているのは顔ぐらいでは…なんて思いながらピタリと足を止めてから息を吐く。

そして携帯を取り出して、写真フォルダからある1枚の写真を取り出した。
幼い子供を真ん中に両脇に男女が写っている写真。


「実の妹……か。俺みたいな人間には勿体ない言葉だな…………会いたいなぁ。もう、会えないけど」


神澤鳴海、そして佐野真一郎。
2人はこの世から他界している和泉の大切な人であり、色んな大切な物をくれた人であった。


「……にしても、もしかしてと思ったけど。ホントに真一郎君の血縁者だったとはな…」


❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈

ー和泉sideー


墓地の敷地内から出た俺は深い溜息をついた。
そして俺の脳内では『佐野万次郎はヤバい奴』という認定をしている。

鳴海ねぇとどんな会話をしたのか。
色々気になる事はあるが、会話したくないな…なんて思ってしまう。


「手に入れたいとか……」


そういう話は嫌な経験しかない。
だからつい警戒してしまうのは、多分今までの経験上だろうと考える。
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