The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
「イズミっちの話、よく真一郎と鳴海から聞いてたんだよねー」
「はぁ…そうなんですか」
「実の妹のような存在だって」
興奮が冷めきれないマイキーは、笑みを浮かべながら幼い時に2人から聞いた話を思い出す。
家庭事情により男装をしているが実の妹のように可愛がっている…そう聞かされた話を。
そう話していれば和泉の目が更に大きく開いたが、直ぐに細くなる。
三白眼に近い群青色の瞳が僅かに揺れていた。
「そう、ですか…」
「イズミっちは何で真一郎君の墓参りに来てたんだ?」
「……今日佐野さんの話聞いた時に、真一郎君と重なって会いたくなったから…ですかね」
「なるほどな」
ドラケンは偶然なのは必然なのか分からない、この出会いにかなり感動していた。
何せマイキーから真一郎が亡くなった際に『鳴海の従姉妹に会いたい』と聞かされていたのだから。
(まさかこうして会えるとはな……。あん時キヨマサの喧嘩賭博してる所に行って正解だったな)
だが少し和泉に違和感を覚える。
真一郎と鳴海からマイキーが『実の妹のような存在だ』と伝えられた時に嬉しそうにも見えた瞳が直ぐに陰りを見せたのだ。
「……はは。ますますイズミっちをオレのもんにしたくなったなぁ」
「は?」
違和感について考えていたドラケンだったが、マイキーの言葉に思わず彼の頭を殴っていた。
鈍い音は墓地に小さく響いて、足元ではマイキーが頭を抱えて蹲っている。
「なっ、にすんだよケンチン!!!!」
「悪ぃ…じゃねぇ!!何本人にとんでもねぇ事言ってんだよお前は!!!」
「最初ケンチンに言った時に、ケンチン反対しなかったじゃんか!!!」
「オレが聞いた時の言葉と違ったぞ!?つーか本人にとんでもない事言うな!!完全にオマエ変人だぞ!!!」
墓地にて騒ぐ2人と、とんでもない発言をされた和泉は若干……いやかなり引きながらもう帰ろうと火をつけて置いていた煙草を水が入った桶に付けて火を消す。
そして未だに騒いでいる2人を見て口元を引き攣らせながら、1回だけの咳払いをする。
すると2人が和泉を見た。
「あ、の…俺帰るんで」
「あ、あ……悪ぃイズミっち。マイキーが変な発言しちまって…だけどチームに欲しいって事だから…多分」
「は、はぁ…」