The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「おかげでこうして、男装している訳です。それに……叔母さんに迷惑かけた分恩返しをしたい」
「恩返し?」
「叔母さんは本家と分家の仲を良くしたかったんです。だからその恩返しをするなら、跡を継いで俺がそうしなきゃと思って……。でもけーすけくんはそんな俺が気に食わない。小さい頃からあの墓の時に言ってたいたような事を言われてましたからね」
まるで人形みたいじゃないか。
そう言われて、確かにそうだなと思った時もあるし俺は叔母さんが死んでからずっと本家の人形のようなものだった。
良いように扱われ良いように動かされる……人形というよりも操り人形だったかもしれない。
「でも人形みたいに扱われていた俺を、小さい頃に武道が、『和泉はアンタ達のお人形さんじゃないんだ!』って言ってくれてだいぶ生きやすくなったんです」
「タケミっち、昔から正義感強いんだな」
「強かったですねぇ。あの時から俺の中では武道はずっとヒーローなんですよ」
守ろうとしてくれる武道と、俺にその生き方は間違っていると諭してくれるけーすけくん。
どちらも俺にとっては有難い存在だし、なによりもかけがえの無い存在だ。
「ま、そういう訳なんですよ」
「オレ、場地の言ってること分かるかもしれねぇ」
「俺も分かってますよ。こんな事馬鹿げてるし、抗えば良いだろうにって。でもその勇気がない……結局は抗うのが怖いだけなんですから」
それに抗えば秋にぃの勘当をしないという話が消えてしまうかもしれない。
絶対にそれだけは阻止したくて、だから抗う事が出来ずにここまで来てしまった。
しかも抗えば当主にはなれないかもしれない。
おばさんの夢を叶える事か出来ないかもしれない、分家の人達が迫害されるかもしれないのだ。
(抗えば、また誰かを巻き込むかもしれない……)
なら大人しくしていればいい。
それに洗おうと思えば、跡を継いでからでも出来るかもしれないのだから。
「……暗い話をして、すみませんでした」
「んーん。イズミっちの事、知れてよかった」
「こんな事知って良かったんですか?」
「オレもマイキーと一緒で知れてよかったよ。和泉、辛かっただろうに話してくれてありがとうな」
そう言いながら三ツ谷先輩は俺の頭を優しく撫でてくれた。
何度も何度も壊れ物に触れるように。