The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「和泉……今さっき『好き』って言った?」
「ごめ…ごめんなさい…わすれて……」
「なんで…?」
声が震える。
伝えるつもりなんてなかったのに、なんでポロッと口から零れてしまったのだろうか。
言っちゃダメだって自分に言い聞かせてたのに。
「め、いわく…かける…から」
「迷惑じゃねぇよ。好きな子に好きって言って貰えて何処が迷惑なんだよ!」
「……え?」
今、三ツ谷先輩はなんて言った?
好きな子に好きって言って貰えて……という三ツ谷先輩の言葉を何度か心の中で呟いてから目を見開かせる。
そして三ツ谷先輩の顔を見れば眉を下げて、頬は少しだけ赤くなっていた。
これは俺の都合のいい幻覚か幻聴なのだろうか。
そう思いながら口を金魚のようにハクハクと動かしていれば、右手を取られて三ツ谷先輩の口元に持っていかれた。
「なぁ、和泉。自惚れじゃないなら、さっきの好きはオレに対して?オレへ異性としての好き?」
その言葉に小さく頷いた。
だけど俺は三ツ谷先輩から視線を逸らしているばかりで、掴まれた右手から伝わる彼の体温から逃げたくなっている。
このまま逃げたい…。
「なんで忘れてって言うんだ?もしかして…恋愛も禁止されてたりするのか?」
「されて…ません……」
「じゃあ……なんで?」
「め、いわくかける……から。俺、普通に女の子としていれないし家の事で迷惑かけるかもしれない……から」
「そんなのどうでもいい」
「え……」
「好きな子に迷惑かけられるなら本望だし、そんな事迷惑なんて思ってねぇよ」
その言葉に俺はズルズルと壁に背中をくっ付けたまま、ずり落ちていきその場に座り込んでしまえば三ツ谷先輩もしゃがんでから俺と視線を合わせてくる。
もしかしたら三ツ谷先輩の言葉は同情かもしれない…この人はどこまでも優しい人だから。
同情で言っているのかもしれない。
信用出来ないのは今まで生きていた事で起きたことのせいなのかもしれないけど…本当に思って言ってるのだろうか。
「同情で……言ってたりします?」
「……オレが同情で言うような男に見える?」
「だって…三ツ谷先輩、優しい人だから」
「…はぁぁ……。今まで分かりやすい行動してたんだけどな。和泉って意外と鈍感なのか?鈍感なのか気付かないフリしてたのか分かんねぇけど」