The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
何時かそんな事を言っていた真一郎。
そんな彼の言葉を思い出しながら、また懐かしさと辛さで涙が零れていく。
「兄妹……」
「そ、兄妹。だから何かあればお兄ちゃんを頼れ。エマでもいいぜ?アイツイズミっちの事妹のように思ってるから。オレとエマにじいちゃんはお前の味方だから」
「味方……」
「そ、味方。そばに居るからイズミっちもオレの側にいて…守るから、悲しませないから」
マイキーの言葉はまるで浸透するかのように和泉の心に広がっていき、何時の間にか涙が止まっていた。
そして和泉はゆっくりとマイキーから身体を離してから彼の顔を見る。
穏やかな表情。
その表情は真一郎によく似ていて、懐かしい気分になっていればマイキーは指で和泉の瞳に浮かぶ涙を拭ってやった。
「落ち着いた?」
「はい……なんか、色々すみませんでした」
「気にしてねぇから大丈夫。それじゃ、そろそろ帰ろ。三ツ谷がなんか晩飯作ってくれてるだろうし〜」
「……はい」
和泉はまだ知らない。
マイキーの『側にいて』という言葉が呪いのように自分の心に入り込んで居る事を。
そして囚われていくことになることを。
「晩飯なんかな〜」
「なんでしょうね。三ツ谷先輩のご飯、どれも美味しいですから……」
そう言いながらメットを手に取る和泉にマイキーはゆっくり振り返る。
さっきまで苦しそうにしていたけれども、三ツ谷の話になると穏やかな笑顔を浮かべていた。
存外彼女は顔に出やすいらしい。
その事に気付いたマイキーは、小さく笑みを浮かべてから『諦めるか』と心の中で呟いた。
「じゃ、帰るか」
「はい」
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ー三ツ谷家ー
「お兄ちゃん!和泉お姉ちゃんとマイキーまだ帰ってこないのー?」
「まだー?」
「んー…どうだろうな。あんま遅かったら連絡してみるか」
「だな」
先にお腹を空かせたルナマナ達はオムライスを完食しており、自分達が風呂に入っている間に来てそのまま出掛けたマイキーと和泉を不貞腐れた顔で待っていた。
せっかく来ているなら声ぐらいかけてほしかったと思いながら。
そんな時、外であるバイクの排気音が聞こえてきた。
聞き慣れたその排気音にドラケンと三ツ谷は『帰ってきたな』と笑う。